2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

七月十六日

二百十日の十六夜月。 狂風,強風も明け方までにはウソのやうに去り、雲間から刺すやうな陽光。台風の持ち込んだ南海洋の湿気に満ちた大気が沈殿し、すぐに汗ばむ。さすがに夕方からは虫の声が高く、秋の風情は知らぬ間に庭に満ちてゐる。無限に続くやうに思…

奇妙さの限界

友人の息子(大学1年生)がオーストラリアに留学したいと言い出し、はじめは金銭的なことや就職のことなども考えて反対してゐた友人も、寝返った母親の説得に応じて賛成するに到った。ところが、出発間際になって友人の祖父(95歳)が突如ひ孫のオーストラ…

カルミナ・ヘヴナーニャ

「天国」てう大げさな名前の割に、その店のみてくれは極めて小さくて、余りにもみすぼらしくて、かわゆらしいものであった。 どうやらこの「天国」は、日が暮れてはじめて輝き煌めく種類の店らしい。夜にしかここを訪れない人にとっては、闇の中に浮かぶこの…

ぼくのペット?

そりゃーワンコは欲しいさ。特に柴犬は好きだ。庭に勝手に侵入してくるブタ猫の糞害を防ぐためにも、夜行性の獣の侵入を防ぐためにも、夕方に海岸を散歩するお供にも、何かにつけて利点が多そうなのだけどね。いくらペットとはいえ、放っておくことは不可能…

昭和式

昭和が流行ってゐるらしい。唱和ではなく、昭和時代のことだ。九州の或る町では、取り残された商店街の復活作戦としてさまざまな案が検討された結果、まだ身近な昭和をキーワードにしてまちづくりを進めて行ったら大成功した例があったり、コンビニで売る商…

PROMS

地蔵盆に言及した以上、PROMSについて述べない訳にはゆくまい。 昔、我輩が倫敦に潜伏してゐた約6ヶ月間は、奇しくもプロムスの開催時期を含む時期であり、観光を兼ねていち早く訪れたロイヤルアルバートホールに翩翻とたなびくフェスティバルを告げる旗や…

地蔵盆

地蔵盆てう風習の存在することは、以前から知ってゐた。現在住んでゐる地方には無いものだが、中学生の頃夏休みになると京都の親戚宅に長期泊まり込んでゐて、大文字が終はり地蔵盆が終はる頃まで過ごしてゐた。京都の裏通りには辻辻に小さな地蔵堂があって…

御心配?

走行地域が火山地帯てうこともあったが、今回温泉銭湯も含めて5箇所もお湯につからふとは、予想外であった。いずれも個性豊かであり、さらりとした感触もあればぬるっとしたお湯もあり、濁り湯もあれば青みがかったお湯も有った。 この恩恵は火山列島に住ま…

盆地巡礼

美しひ盆地は文化の揺籃であり、要害要衝ともなり、難攻不落の地勢を内包してゐる場合も多い。今回初めて訪れた安心院(あじむ)の里ほど美しい盆地は、そうも多くはあるまい。盆地を取り巻く里山には磨崖仏が眠り、古代の謎を秘めた神社がいくつも取り囲み…

熊襲急襲高速隼人

電撃的に九州方面を攻略。されどいまだ夏休みとて、移動の途中も行く先々もコビト多く、いろいろ難儀せり。思へば吉野ヶ里侵攻が5年以上前のことだから、それ以来てうことだが、始めての秘境や旧跡も含め、限られた時間の割に行動予定範囲は広大である。 友…

天花粉有情

「てんかふ」こと「天花粉」、又は「天瓜粉」、しばしば「シッカロール」、時には「ベビーパウダー」を知らない人の居ることに改めて驚く我輩であったが、知らぬものは知らぬわけだからいたしかたあるまい。でもよく考えてみると、最後の「ベビーパウダー」…

曼陀羅故事

先日のネパール的話題の延長線上で、部屋に掲げてあるマンダラをつぶさに眺めてゐると、いろいろな感情や感慨や思い出や謎や疑問が次々に湧き上がってきて、不思議な感興を覚える。 実はこの小さなマンダラはネパールで購入したものではなく、香港で入手した…

魅惑のネンミョン

先日、初めて韓国式冷麺を買って作ってみると、独特の食感とスープの旨みでなかなか優秀な製品だった。ただその時には残念ながら、具材を色々取り揃えるだけの状況になかったので、錦糸卵とキュウリの千切りだけだったけど、十分イケたのだ。 今まで食べた朝…

愛と幻想の日々是精進

極めて個人的な記念日。第45回! さておき、車で遠出。それにしてもこの湿気と気温たるや、図面の紙が丸まり製図ペンのインクが滲むばかりならず、髪の毛がしゅるしゅると跳ね上がり背中にTシャツが張り付き、冷蔵庫にしまい忘れた食べかけの料理は黴び洗…

デュ・プレの延長?

再びジャクリーヌ・デュ・プレのCDを聴いていたら、St-Germain-des-Pres 教会のことを思ひ出した。サン=ジェルマン=デ=プレ教会は巴里セーヌ左岸、パリ6区のこの界隈には骨董屋やギャルリー、古書店が軒を連ね、細い路地が入り組み、落ち着いた雰囲気…

賽巴巴行幸

庭のセミはいつしか殆ど、ツクツクボウシに入れ替わってしまったやうだ。 昨日のネパール繋がりの延長線上の地の果ての丘の上の出来事の出来心の一環として、日頃焚いてゐるお香のストックをチェックしてゐたら、奥の方から「サイババ香」が出てきた。数ある…

名残の送り火

本格的な曇り空を見るのは、本当に久しぶりのこと。気紛れな雨も何度か通り過ぎて、多少は植物にも人間にも生気が戻ったやうでもある。昨夜は巴里のおばさまからお電話入り、先日のアジェンダのお礼状もまだ書きかけのままなので大変恐縮しつつも、次から次…

三昧式

昨夜の日暮れを待たずに始めたBBQは黄昏時に肉の焼き入れを始め、いろいろなもの屋外で焼き乍らも、タイ出身の友人奥様作るところのエキゾチックな炒め物つまみ、泡立つ麦酒や発泡酒、焼酎や梅酒や烏龍茶もまじえて豪華な宴に。話題は自然に30年前の思…

御施餓鬼三界曼陀羅

近所の寺では盆の大供養が行われるらしく、朝から参詣の人が絶えない。殆どが家族連れで、境内の墓参りも兼ねて、花やら供物を仰山抱えてやってくる。田舎てうこともあるが、見ていると三世代でやってくる家族がかなり多い。普段は殺風景な本堂の正面には施…

ムシムシコロコロムシゴコロ

案の定、お山で困ったちくちく虫、一夜明けてみれば方々が赤く腫れ上がって、強烈な痒みが発生してゐる。姿の見えないことを考えると恐らく地壁蝨(何と恐ろしげな字面!)であらう。ついでに足首はミニムカデに刺されたやうで、別の痛がゆさを感じる。とに…

お山とガリガリ君と流星群の関係

お山に入り、お山でお仕事せり。お山は他界なので、下界と違って人知で計り知れぬものの気配に満ちており、常に四方八方からの視線を感じる。お山お山と申せども、さほどの深山に非ず、険しき眼下はさほど距離を置かずに磯辺であり、お盆休みで発狂したやう…

稲の心

毎年庭で稲を少し、バケツや植木鉢を利用して育ててゐるが、開花が始まった。最近は早生が主流のやうだし、今年の場合は十二分の日照と気温で稔りも早く、豊年満作のやうである。昨日はどこであったか、早くも稲刈りのニュースが流れてゐたが、それにしても…

空想科学的宇宙世界

「リディック」について語ろうと思ふと、前作「ピッチブラック」から話を始めなければならないのだらうが、ダークヒーローの活躍するSF映画は極めてマイナーな存在であり、誰も読んでくれない可能性が95%にまで高まることは間違い無い。この数値は電脳…

葡萄収穫祭

葡萄の収穫は、真夏の日差しを避け、朝早くから行われた。朝露の名残もみずみずしさを強調するが如き風情で、さっと水で濯がれて竹籠に盛られた葡萄は神々しいばかりだ。収穫を祝う音楽は、すでに準備していたのだ。それはアルカンジェロ・コレッリのソナタ…

ゴーヤーマンの憂鬱

いつの頃からか、ニガウリが「体に良い」てうことになったらしく、今ではほぼ年中超級市場などで見かける。我輩はあの手の苦みはちっとも苦ではないので、よく食べる野菜のうちに入るだらう。別にうちなー料理のゴーヤーチャンプルーを強く意識しているつも…

或る、困り事

STARTREKの宇宙船フィギュアを集めていたが、予想通り全種類集まる前に商品が姿を消してしまった。テレビシリーズは現在も続いているが、前作までの設定とは違って初代テレビシリーズである「宇宙大作戦」(何たる日本語訳!)に到るまでの話なので、かなり…

よくわからないこと

世の中の「よくわからない」ことはいくらでもある。無限にある。テレビは毎日見てゐるが、音を消してCDをかけている場合が多いので、真相や詳細は「よくわからない」てうのが現実だ。いくらでもある「よくわからない」ことだが、最近「よくわからない」の…

我が庵は・・・

時節を問はず、何かにつけて開く本、てうものがある。中原中也の詩集はその筆頭であり、詩に限れば朔太郎はそれに次ぐ。なかでもとりわけこの詩の本質は、二十歳の頃から我がものと大層相通じるものがあるが、この意を単なる被害妄想や精神病的階層に矮小化…

蚊取り風物

我輩の邸宅に於ける蚊取り線香の消費量は、相当のものである。数量的には一般家庭の5倍に達するのではないかと思ふが、数へたわけではないので直感的なものだ。この際、細かいことは気にせんでもよろしい。実際、田舎のドラッグストアやホームセンターには…

空と雲と英国式と

雲、飛ぶ、白い雲、飛び行く、青い空に、白い雲、飛び去る。 何か空気中の水分が変則的台風によって持ち去られたやうで、爽やかでさらりとした感触の空気になった。風もまだあるし、日差しも戻って肌を強く差すが、外に出て天を仰ぐと無数に去来する雲の群に…