奇妙さの限界

神の再臨場所?

友人の息子(大学1年生)がオーストラリアに留学したいと言い出し、はじめは金銭的なことや就職のことなども考えて反対してゐた友人も、寝返った母親の説得に応じて賛成するに到った。ところが、出発間際になって友人の祖父(95歳)が突如ひ孫のオーストラリア行きに反対を唱え始めて困ってゐるてうのだ。その理由が奇妙で、「オーストラリアにはアボリ人てう恐ろしい土人が居るので、行ってはいかん」とのこと。これには親子共々さすがに意表を突かれたやうであるが、土人「アボリ人」ではなく「アボリジニ」てう先住民であることや、かつてはイギリス系の白人達によって奴隷扱いされていたこともあるやうだが、今では居住区も定められて文化的にも保護尊重されており、留学生が長期滞在することに何ら影響は無いことなどをいろいろ伝えるのだが聞く耳を持たず、「行ってはいかん」の一点張りだったそうな。我輩も面識のある穏やかそうな大おじいさまであるが、一体いつどこで「アボリ人」てう間違った情報がインプットされてしまったのか、大変気になることではある。戦争経験に由来するものだらうか? ともかく当の息子は昨日元気に出発して行ったが(東京で他の留学希望者たちと合流し、1泊して研修を受けてから成田から飛び立つらしひ)、大おじいはその気配を察知してデイケアセンターの職員にも暴言を吐き、たいへん機嫌が悪いらしい。誠に奇妙なことだ。
奇妙と言へば、オリムピックマラトン競技のトップ走者を妨害したアイルランド人だ。別にオリムピックに限った事ではないが、体育競技に何ら興味は無いので、どの種目も真剣に見たことが無い。テレビをつければオリムピックばかりだし、音を上げれば「ゆず」の歌声の洗脳状態なので、消音モードで付けてゐるだけだ。昨夜は蜷川演出「オイディプス王アテネ公演の様子を堪能してゐたが、その後も漫然と総合放送を眺めたりしてゐた。いつのまにかマラトン競技が中継されており、終盤になって奇妙な恰好をしたアイルランド人の乱入と相成ったワケである。聞けば彼は耶蘇の元司祭てうことであり、ベレー帽とキルトスカートの風貌でコースに走り出て、ブラジル人の先頭走者を道路脇に突き出そうとしたのだ。警察の事情聴取に対しては「キリストの再臨に備えて捕まえた」などとわけのわからんことを言ってゐるさふだが、以前にも同様の恰好でF1イギリスグランプリの走行コースや、ウィンブルドンの試合に乱入してゐたのだそうな。ギリシャ警察のコメントがふるってゐて、「彼は精神的に重大な問題が有るやうだ」とのお言葉。そんなことは警察に言われんでもわかってゐることであり、奇妙だが突如人を刺したり銃を発砲したり、自爆したりする過激な輩に比してどことなく憎めないものがある。日本人がこのやうな事件を起こしたら、どうなるのだらう。着物を着てマラトン走者を妨害し、警察に対しては「アメノウズメノミコトに協力してアメノイワトを開いてアマテラスを救出するためにおこなった」などと言ふたらどうだらう? アテネなら厳しいお咎めで終わることもあらうが、もし次回の北京で起こったら日中戦争に発展する可能性もあるな。とにかく奇妙さも節度が必要てうことだ。大いに自戒も含めて、くわばらくわばら・・・(-_-)