PROMS

屋根付きコロッセオのやうなもの

地蔵盆に言及した以上、PROMSについて述べない訳にはゆくまい。
昔、我輩が倫敦に潜伏してゐた約6ヶ月間は、奇しくもプロムスの開催時期を含む時期であり、観光を兼ねていち早く訪れたロイヤルアルバートホールに翩翻とたなびくフェスティバルを告げる旗や垂れ幕、掲げられたポスターなどを、薬指銜えて眺めてゐたものだ。毎年7月下旬頃から始まる音楽の祭典であるプロムスは、9月の第2土曜のフィナーレにかけて、さまざまなコンサートが毎日開催されて行くワケで、主体はクラシック音楽だけどジャズなどの分野にも積極的である。とにかくフィナーレの異様な様子は最近ではNHKでも放送されてゐるので見たこと有る人も多いだらう。我輩は潜伏中の身だったこともあり、プロムス関連のコンサートはひとつふたつチケットの入手を試みてみたものの、つひにどれも聴くことができなかった。その前年のフィナーレに参加したてう友人の話や、NHKによる中継の画面を見る限り、大変人集合音楽会といった有様で、異様を通り越した変人大集会と化してゐた。そもそも我輩が30年前から執拗に指摘してゐるやうに、大英帝国は総変人気質の国であり、そのくだらなさと奇妙さは世界最高水準を超越し、太陽系随一てうレベルに達してゐる。顕著な事例は英国皇室の人々や、Beatlesなどの著名人達の言動に見ることが出来るワケで、不思議を通り越していきなり奇妙である。この気配はすでに100年も前に漱石山人も認知して指摘されて居る如くであり、フランス人の評論などを改めて必要としないのだ。意味のわからん人は、モンティ・パイソンの番組や映画を観るがよろしい。何?モンティ・パイソンが何かも知らんだって!? さういふ人はこれより先は読まんでよろしい!(-_-)
とまれ、プロムスのフィナーレは6000人入るロイヤルアルバートホールで盛大に行われるのであって、来場者の多くはさまざまなものに変装してやってくるワケで、指揮者を模したタキシード姿の人は数百人居るし、自分用の指揮棒を持って来てゐる客も数百人ゐるワケだ。シルクハットに万国旗をあしらったものをかぶって盛大に菜箸のやうな指揮棒もどきを振り回す者もゐるし、なぜかミイラ男の恰好した人物も居る。コンサート終盤の「威風堂々」では本物の指揮者の指示無くても全員が歌うし、「ルール・ブリタニア」あたりからは観客全体が興奮状態となり総立ち状態。冷房の無いホールはサウナ状態で、最後の曲となる「ゴッド・セィヴ・ザ・クイーン」では観客の8割が自分が指揮者であると勘違いしてトランス状態になって終わる、てう狂気に満ちた音楽祭なのだ。運良く?このフィナーレのチケットを入手して激しくトランス状態で指揮者を演じた者は、その後1週間は社会復帰ができなくて、中には廃人のやうになってしまう人さへゐるらしい。とにかく英国式変人気質の炸裂てうか、1年分のフラストレーションの発散てうか、死ぬまでに一度は参加してみたいコンサートの筆頭である。
こちらがBBCのプロムス関係のHP。今年のプログラムなど、興味有る方は御覧あれよ、よや。