葡萄収穫祭

同時にトマトも収穫せり

葡萄の収穫は、真夏の日差しを避け、朝早くから行われた。朝露の名残もみずみずしさを強調するが如き風情で、さっと水で濯がれて竹籠に盛られた葡萄は神々しいばかりだ。収穫を祝う音楽は、すでに準備していたのだ。それはアルカンジェロ・コレッリソナタであるのだが、本来ヴァイオリンの演奏する主声部をリコーダーに置き換えたアンサンブルだ。しかもそのリコーダー(ブロックフレーテ)はフランス・ブリュッヘンであることが極めて望ましいのだ。通奏低音バロック・チェロとチェンバロの繊細な伴奏に乗って、伸びやかで穏やかなリコーダーのメロディが心地よく流れ、葡萄の気高さと相俟って最高の光景を演出する。とりわけ有名な「ラ・フォリア」ト短調は優雅で切なく、情熱的な展開をみせる。続いては一転してドミトリ・ショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲ということに、なぜか決まっているのだが、背景や詳細や解説は省略しやう。
しかしだ、ここまで気を遣っている割には、肝心の葡萄の種類を知らない。4年くらい前に、ホームセンターの苗木売り場の片隅に放擲されていたものを買い取って植えたものが、やうやう去年から本格的に結実し始めたのだ。枯れる寸前だったやうなひょろひょろの木が根付いたことも驚きだったが、房の多さもたいしたものだ。とは言っても農薬をかけるわけでも紙袋をかけるわけでもないので、実は昆虫や鳥の恰好のエサだ。去年は手をこまねいている間に、葉や実がカナブンやナメクジやバッタ虫やでんでん虫やイモ虫やケ虫やイガイガ虫やチンチロ虫やヲコゼ虫やマタタビ虫やヘッツイ虫などに喰われたり舐められたりして、皮が硬化したり変色したりして、食用に適さない状態になってしまったのだ。つまり、大半が加工した覚えもないのに、干し葡萄みたくなってしまったワケだ。今年は早くからカナブン駆除を続けてきた甲斐もあって、かくも盛大な収穫祭を催すまでになったワケだ。(^^;)
されど、我輩の究極は葡萄を大収穫し、大々的に葡萄酒を密造することであるので、今年が第1歩であると言っても過言ではなからう。さておき、全ての果物の中で一番好きなものが葡萄なのだが、巨峰は今や文字通り高嶺の花。昔は今頃になるともさもさ食べていた記憶のあるデラウエアーさえ、今ではけっこうな値段で売っている。斯くなる上は自家栽培、てうことになるワケだが、そう簡単に行くはずもない。今回収穫したものも、いざ食べ始めてみると粒の割に種が大きく、かういふ部分から改良の余地があるのだらうとしみじみ思ふのであった。いつかは庭で巨峰の実る日を夢見て・・・
いつしか黄昏を迎へ、BGMは以下の路線に変更せり。相も変はらず、大英帝国路線也。
TEARS FOR FEARS "TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)"
THE CRANBERRIES "WAKE UP AND SMELL THE COFFEE"
SIMPLY RED "STARS"
THE STYLE COUNCIL "THE SINGULAR ADVENTURES OF THE STYLE COUNCIL, GREATEST HITS VOL.1"
SWING OUT SISTER "THE BEST OF SWING OUT SISTER"
DAVID SYLVIAN & ROBERT FRIPP "THE FIRST DAY"