島風情

陽光霧中

島へ。
桟橋はいつになく大勢の乗客で、やや古めの高速船の座席もほぼ満員。平日てうに、何事ぞや? 
海上五里霧中。ほぼ無風であって、天気本来晴朗なれども、指呼の距離に鎮座するはずの風車が見へず、雨乞ひ山の山頂が見へず、勿論行く先の島影も見へず。高速船はいささかの跳躍もなく、びうびう粛々と海上を滑り行く。
やがてぼんやりと、何とはなしに青黒き島影のやうなもの近づき、いつしか防波堤で囲まれた港湾桟橋へ。下船したのは我輩と老夫婦のみであり、其の他の乗客は次の島辺か、はたまた今ひとつの半島行きか。
時既に昼近く、港の周りのコンクリート護岸や舗装道路からの照り返し、港の水面からも沸き上がるが如き水蒸気の熱気が相俟って、忽ち額には大粒の汗。そんな陽気にも関はらず、堤防や岸壁には何人もの釣り人が糸を垂れてゐる。今時はどんな魚が釣れるのだらう。
(−_−)
           
都合1時間ばかし、話すべき人と話すべき事をあれこれ話し、片や土産話にも耳を傾け、一旦お暇してお墓参り。昼下がりの墓地には人影のかけらもなく、聞こえるのは足下の港から響く漁船のエンジン音と、木陰から人の気配を感知して集まり来る蚊虫の羽音のみ。献灯し、少し多めの線香を立て、彼岸に佇む者との対話。
其ノ後、細く曲がりくねった瀬古道を辿り、唐突な階段や民家の軒先をすり抜け、島の反対側の尾根にあるまう1軒の訪問先へ。たった15分ほどの徒歩行なれど、全身大汗かきかきにて候。予告も何もせぬ突然の訪問にも関はらず、暖かくお迎へ戴き嬉しき限り。お届け物を手渡し、僅かな時間にしては多くの積もる話しの触りをあれこれ。出航の時間を気にする余り、結局港まで車でお送り頂きまして候へり。誠に有り難きこと也。
(−_−)
             
再び25分間、海上を走るの人となり、我が居住セル偉大な半島先端に帰還せり。大気中の水蒸気量は相変はらずであるが、夕方とは云へ夏至の未だ近きが故に日高く、改めてホームセンターやドラッグストアにおもむき、懸案であったネズミ捕りや多少の毒物、虫除けの為のいくつかの秘薬を購入しての帰宅。
実は中庭の除草も最低限範囲しかしておらず、掃除も何もかもが中途半端のまま。衣類の総入れ替へくらゐ、今晩中に終了出来ますやうに・・・