検査一下

夏の厄除にて候

人間ドックに行って参りました。
勿論、前夜9時からは飲み食ひするなかれてう注意書に従って、いつもの夜食も無し。更に、当日朝も飲食罷り成らむてうことで、こっそり一口だけ鉱泉水飲んでの御参勤。
地域の農協系大病院に到着したのが8時前。続々と各種職員さまや患者さまがたの御出勤時間でもあって、早朝の病院など見たこと無い我輩にとっては驚くべき光景。
健康管理中心専用の特殊出入口から潜入し、問診票と検便を提出し、受付を済ませるや否や指定のジャージ(のやうなもの)に着替へ。待合ひの長椅子には既に検査待ちの人民が10名様ほど。
既に被験者各自の個性は剥奪され、今後は番号札の番号のみで呼ばれるワケで、何やら匿名性が増して映画か劇を演じてゐるやうな錯覚を覚ゆ。
  
検査項目は多岐に亘り、各人各種検査を選択してあるやうで、学校と違ひ待合ひの全員が同じ検査を辿って行くわけではない。我輩の場合は一桁の番号故かだうか、聴力検査→心電図検査→腹部超音波検査→動脈硬化度検査→視力検査→眼底検査→身体計測(メタボ式)→血圧測定→血液検査(5本)→尿検査→肺機能検査→内科検診→胸部X線検査→胃部X線検査の流れが指示され、待合ひを中心に周囲の検査室を出たり入ったり右往左往。
都合2時間近くを健康管理中心で過すうち、さまざまな単独検査で訪れる若者が入ってきたり、今にも倒れさうな老人がよろよろと入ってきたり、だうして此処では薬を出さんと言って受付で悪態をつくオジサンが来たりと、此処でもまた人生イロイロ。
我輩としては、本来抽選に外れた「脳ドック」でMRI検査をして欲しかったのだが、待ち時間に事務方に訊ねてみると、個人の申込だと早くても9月以降、しかも費用は驚くべしの4万3千円てうこと。
昔別件でMRIで脳を撮ったことがあったが、あの頃から確実に小規模梗塞は増えてゐるだらうし、ひょっとしたら巨大な腫瘍が成長中かもしれぬ。
まあ、カラダのことなどは心配し始めればキリが無いワケで、今時は40で動脈硬化のヒトも居れば60で虫歯無しのヒトが居たりと、各人各様の加齢老化生老病死の過程を進み行く上で、疾病との遭遇も其のヒトの運命。
享受して自然治癒または自然死を待つもよし、華々しく各種療法を駆使して最大限に抵抗するもよし。それぞれの意思を貫けば、それで良い。
さて、脳内メーカーを除くほぼフルコースを歩む検査の王道、正式定価はやはり2万も3万もするのだらうが、今回は偉大な市町村さまの補助金を得てゐる御陰様で1万円也。
再び着替へ、受付けで代金を支払ふと、「こちらはサービスで御座ゐます」と病院1Fに有る喫茶店でのお食事券が手渡された。
ふむ、確かにハラペコハムニダではあるものの、最後の検査であのイヤな発泡剤とぎうにうびん1本分ほどもあるバリウムを飲んだ関係上、領収書と共に「直ちにコレを飲むべし」とて強力下剤も手渡されてゐる身の上。
数秒の内に脳内シナプスを駆使し、「腹が減っては下剤も効かぬ」などと言ふ屁理屈をあみ出し、喫茶店で軽食と呼ぶにはやや大振りなブランチを頂戴した上で珈琲を飲み、心頭滅却した上で荘厳に下剤を咀嚼し、帰路に就く偉人であった。
   
   
    


大いに喰ふべし!