「井戸尻文化回廊」の豊饒

典型的朝餉

塩沢温泉「信甲・館」での夜は更けて、島氏と「ことのはのくさむら」のあれこれを語り合ひ、眠りに就いたのは午前0時を回った頃だらうか。
露天風呂は24時間入ることが出来るてうことだったので、再度入浴をせむとも考へたが、現在の長髪を乾かすために必要な時間のことを考へて諦めた次第。幸ひ時々出現するてう山猿も、長髪の原始人を恐れたのか姿を見せることはなかったが、夜中に2度ほど大雨の高揚があって、旅館の脇の沢が囂々と鳴る音と豪雨が旅館の屋根を叩く音が相俟って、ただならぬ響きに寝覚めて仕舞ったが、基本的にはぐっすり眠ることが出来た。
所謂旅館の典型的な朝食を済ませ(健啖の為ごはんおかはりは寝起きでも3杯!ちなみに生卵は付いておりませんでした)、やうやう雨も上がり雲のまにまに時折陽光が差し込む天気で、小林氏のお迎へを待って再び井戸尻考古館へ。
(-_-)
                 
今天は田中基氏とも再会出来、先年喜寿を迎へられた大先達武藤雄六氏も座に加はっていただき、座談再開。
台湾新石器文化の概容説明を求められたものの我輩の見聞発表は余りにも表面的なもので、今回の討論水準には何ら寄与できないものであったことが悔やまれるが、やはりヘンツェ=ナウマン氏に端を発した図像解釈の方法を象徴解釈に援用するれば、寧ろ論理学、数学、物理学、代数の概念を用ひて検証可能な要素も多々あることが実感されたのであった。
フラクタルは出ませんでしたね・・・
(-。-;)
                
即ち、今天の内容の主題は、土器図像に表された世界観と神話像で、半人半蛙に代表される太陰的な世界観や可視的な火山の存在によって造り出された独自の世界観、眉と腕の独特な表徴と眼の表徴、天空より懸垂された龍の造形(たつまき、龍下がり、イノオまたはエイノオ)の変遷や変化(此処では従来の編年研究が大いに貢献してゐる)などなど、徐々に集約されつつある此処の要素がやはり、小林氏らの直観通りに全て根底で経絡を以て関係してゐることが、まさに今解明されつつある。
谷川健一氏を交へ、小林公明氏の忍耐強い観測や考察の集積に田中基氏らの直感的知見が絡められていき、独自の理論が醸成され、同時に精製されていく生々しい過程を目撃できたことは、我輩にとって今回の最大の成果だが、今後は東海地方(余りにも曖昧な!)や沿岸方面からの視点を投影できるほどの情報収集を進め、「井戸尻文化回廊」の中心地でかたちづくられた文化内容把握の方法論を援用し、濃厚な文化領域の周辺または縁辺地域てう視点ではなく、まう一つの文化領域として捉へることを目指したいとぞ思ふ。かういふ意味では今回の座談会は嚆矢であり、新たな歴史史観提唱の出発点でもあるのだ。
(―_―)
                  
さて、このやうなさまざまな情報提示と討論が流れるうちに、いつしか午後になってゐた。
昼飯と称して皆でワゴンに乗って、車で10分ほどのところにある蕎麦屋「おっこと亭」に繰り出す。独特のきりだめそば(四角い木の盤にそのまま盛られて出てくる)を皆で突っつき啜り、ああさう言へば今頃の此の頃はどこもかしこも蕎麦の花が満開で、黄金色の稲穂が垂れる田んぼと蕎麦畑が方々で隣り合ひ、斜面を段々に開拓した独特の風景を作り出してゐて美しいな〜などと、口中いっぱいに広がる蕎麦の香りや時折鼻につんと抜ける山葵の爽やかな刺激を味わひ乍ら、いろいろのあれこれを思ふ。
(-_-)
                    


神像土器の壺中天から出現した田中基氏
                   
 
           
 
                


精緻なる造形の妙を考察する小林氏、谷川氏、田中氏
                    

おっこと亭で美味しい蕎麦を堪能、谷川先生は何故か売店の鹿肉の缶詰が気になる様子
                   
 
おっこと亭の「きりだめそば」はこのやうな角盆に盛られて出てくる

                     
                

残念乍ら今天しきりに雲湧き、富士蓬莱の姿は見ゑず・・・
此の時期、黄金色の稲穂と蕎麦の花とコスモスが同居し、マクロコスモス的風景が出現する。
                    

                    
                    

井戸尻遺跡 (1965年)
八ケ岳縄文世界再現 (とんぼの本)
井戸尻―長野県富士見町における中期縄文遺跡群の研究 (1965年)
          

光の神話考古―ネリー・ナウマン記念論集

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甦る高原の縄文王国―井戸尻文化の世界性

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