「おらあとうの井戸尻」から「日本の井戸尻文化」への昇華

床の間にも「龍」が居った!

恒例のことだが、昨夜は部屋の片付けやら資料整理で数時間しか眠られず、それでも6時前には起床して朝食もそこそこに出発。
ローカル線から豊橋まで出ると、一応小雨は上がりつつあるやうであったが、休日風情の人民で火車站はそこそこの賑はひ。さうか、豊橋から飯田線でいきなり岡谷まで出る手もあったなとはふと思へども、矢鱈時間がかかりさうなルートなので現実的ではない。
特急で金山まで約50分、其処からは先づ8次51分発の快速で中津川まで10時4分着、乗り換へて10次10分発の松本行きに乗り換へて12時4分塩尻着、12時12分の甲府行きに乗り換へて13時3分、予定通り信濃境着。都合6時間半もの大移動にて候。
途中、中津川以降の木曽路は全て雨降る中、しかも塩尻辺りではかなりの大降りで、信濃境も雨にけぶり、たった10分ほどの講演会会場までの下り坂でしっかりと濡れて仕舞った。
(-_-)
              
さて、会場の清泉荘は老人保養施設も兼ねた古い建物で、舞台のある大広間はどことなく懐かしい雰囲気。
このやうな雨にかかはらず、会場には60名以上の人々が集まり、井戸尻遺跡発掘五十周年記念講演の目玉、谷川健一氏の「巫女の起源」のはじまりはじまり。
内容は当然、演題の範疇に収まらず、広く広く古代世界へ。古代人の再生願望、卵、瓢箪、葫蘆、卵生説話、蛇、龍、うつつ、うつろ・・・
ヘビ、ハブ、ナガムシ・・・
ノロ・ユタ、神社巫女、民間巫女、カミガカリ、カミダーリ・・・
此の世界は我々が想像するよりもうんと広く、実は奥行きがあるのだてう話。谷川氏のことばのくさむらもまた、広く深く何処までも果てしなく広がって行く。お話の後半は1時間ほどたっぷりと質問時間が取られてあり、これまたかなりディープな質問が次々と飛び出し、井戸尻遺跡の周辺で育まれた人々の関心の深さや広さにも、改めて感心する次第。
午後1時半から4時過ぎまで、時折雨激しく降りたりけるに、皆で耳欹ててしばし外を眺むるもまたをかし。
其ノ後は場を井戸尻考古館に移して座談会の開始。テーマは「井戸尻文化研究のビジョン」てうことだが、小林公明氏の先導に従ひ、島亨氏が流れを整理しつつ、「井戸尻文化」と言ふものの正体を一つ一つ検証していく。
勿論、緻密に構築された論理的説明も、やはりさまざまな外部の意見や異なる視点、見識の篩に因って揺さぶられ、籾殻や泡沫や芥を濾し取れば更なる強靱な概念が其処に立ち現れるわけで、考古学的な物的証拠を用ひ概念化していく過程には必要なことであるなあとつくづく思ふ。
座談会の具体的内容はとても此処に記せる質量ではないが、兎に角此の茫漠深淵たる驚くべき文化の内容について、当事者からの生々しい証言を交へて検証していくてうことは、たいへん貴重な機会であった。
理の当然、数時間で語り尽くせることの出来る内容ではなく、今天はお開きにして皆で駅前の食堂「やまびこ」へ。懐かしいやうな昔ながらの食堂メニューを突っつき乍ら、谷川氏を囲みこれまたさまざまな話題を展開させ10時頃まで。
国道方面に100m近く下ったところの温泉宿である信甲館に沈没し、そぼ降る雨の雫を受け乍ら、露天風呂に深く深く身を沈め、心ゆくまでぬめりのある鉱泉を楽しんだのであった。

                     

    
                 
              

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塩沢温泉「信甲・館」:温泉(露天風呂も併設)のみの利用は400円