縄綯ふ者ども

けぶり立つ見ゆ

早朝より、我が集落周辺の水田で藁焼きが行はれたやうで、灰色のふわふわとしたものが仰山降ってくる。
藁を焼く煙は香ばしく、柿の木の枝葉のまにまに棚引く煙を木漏れ日が優しく貫くと、足下の秋草の風情と相俟ってなんとも奥ゆかしい秋の一日の風情が醸し出され、心和まされる。
しかし安心は禁物で、昨夜のうちに干しておいた洗濯物には浮遊する灰がいくつも付着してゐることを発見し、慌てて部屋に取り込むも、時既に遅し的Tシャツ2枚外に有り。
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さて、今天は縄文前期三昧。
脳内と嚢中が激しい細分編年で加熱し、加水式に因数分解して臨界悶死寸前。
厳密に細分すれば2型式または2.5型式分に相当するのだが、主体は鉾ノ木式範疇であるのだが、上広覧式と清水ノ上3式との間とでも言っておかうか・・・
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羽島下層2式段階から続く北白川下層式土器の段階もいろいろあって、今では1a,b式から、同2a,b,cの三段階に細分が進んでゐるやうだが、此の時期は刺突文土器を中心に、羽状縄文や数条の突帯を貼付した上で刻目を施し文様を描くものと、組成の割合がかなり詳細に明らかになってゐる。
そもそも羽島下層2式で用ひられた、小さく2又は3の字を描くやうな施文具は何だったのかよくわからんが、上広覧式土器で主体となる繊細な刺突文の原体は、ハイガイなどの肋条を割って作られたものだ。爪形文にもD字が重なったやうなものや単独のもの、C字や逆C字のものなどもみられ、これらの微妙な相違は単に利き腕の違ひや施文方向の違ひを超越した、何らかの意思のバリエーションによって生じたものであることが推定される。
此のやうな連続爪形文や羽状縄文が盛行する前段階では、条痕文を地文に用ひて調整した上で、刺突文を施してゐる。地文を条痕から縄文へ、それも美しい羽状縄文へと置き換へた理由は何だったのだらう。勿論其処には美しさの追求てう要素もあったのだらうが、鳥の羽の如き、魚鱗の如き、または蛇の鱗の如き羽状縄文が何らかの呪術的な力を発揮してゐたに違ひない。羽状縄文の中にはかなり深く器面に喰ひ込んで施文されたものも多く、粘土でモデリング陽像を採って細部を眺めてみると、幾重にも撚られ、綯はれた縄文の繊維の様子がよくわかる。
また、C字形を基本とする連続爪形文の偏執狂的なまでに密な施文も魅力的だ。経験的に、施文道具をかなり強く器面に押しつけなければならないのだらうけど、器壁は驚くほど薄く、胎土は緻密だ。黒く焼き上げられた(一部は赤彩)其の土器は存在感十分で、どのやうな役割が与へられてゐたのかいろいろ想像を巡らせる。
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型式名の呪縛を逃れ、純粋に造形美を考へてみることもまた、必要なことである。