改葬予行 - panaliのブログ

幻影城

奥まった路地の更なる奥から、深夜までぼそぼそと会話する声がする。
聞けば此の家の奥には、独居老人の住む一軒家や外国人留学生の住むうらぶれたアパルトマンがあって、細い路地の奥にも自転車が何台も置かれてある。我輩の寝室として提供された座敷の窓からは、路地を夾んで隣家の居間の窓と向かひ合ってゐるが、ふくよかで穏やかなかむばせをした白い猫がいつも窓から外を見てゐて、実に可愛らしい。
これもまた、大都会の片隅のささやかな一角の情景。
さて、今天中島氏は講義の為早朝から武蔵美へ。花子さんも夢之島大植物園に御出勤の為早朝にお出掛け。一人取り残された我輩は呑気に8時過ぎに起床し、冷蔵庫を覗いてみたりぎうにうを飲んでみたり。隣家で鉄筋敷設工事が本格化しはじめた9時過ぎには、荷物を担ぎふらりと出掛ける。
天気は辛ふじて曇天ではあるが、時折霧雨のやうな小雨が風に混ざる。今天は珈琲屋バッハに出掛けて機材の点検とミニ・リハーサルを行ふため、スピーカーなども背負ってのお出掛け。
東砂から荒川の土手に出て北上するのだが、陰鬱に曇った空の下には蕩々と流れる荒川の川面。そして細長い中州がそのまま高速道路になってゐるやうで、高架の上にはのろのろと仰山のトラックが連なってゐる。都営新宿線の東大島を目指して歩みを進めるうち、土手がそのまま大島小松川公園となり、古い取水口か閘門が残されてゐた。昭和初期の遺産のやうだが、其の形状は西欧の城郭のやうで面白い建築物だ。
其ノ後、東大島駅から先づは神保町まで出て、言叢社へ。島さん五十嵐さんにご挨拶し、お話いろいろ。忽ち2時を過ぎて、次に南千住を目指す。つくばエクスプレスの新駅が整備されてゐて、反対方向に出て仕舞ひ、大迂回。泪橋から浅草方面にまうちょこっと南下した右手に、珈琲屋バッハは鎮座せり。ご主人と奥様に挨拶後、無事中島氏とも合流し、あれこれお話ののち、機材の点検へ。
PLUSの小さなプロジェクターだが、Macとは相性の良い機種と評判通り、接続語直ちに画像がスクリーンに映し出され、Keynoteの動きも軽やかで、問題は無い様子。AirMacでiTunesから小さなBOSEに飛ばした音楽も心地よく流れ、予定してゐたリハーサルは無事終了。
明天の予定を伝達後、MacBook以外の機材は置き去り、お暇する。
南千住から電車に乗る前に、江戸の世の小塚原処刑場跡地、鉄道高架の狭間に佇む地蔵菩薩の石像と墓地を訪問。其処はまさに時間と空間の狭間。しばし時を忘れて写真を撮影し、改葬広告の掲示された墓石と卒塔婆の森を彷徨ひ歩く。
其ノ後ふと我に返り、中島氏と協議の結果、晩餉の外食は控ゑ、取り敢へず一旦帰宅して買ひ物に出、予定通り鶏肉と鶏肝を入手。そのうち花子さんも帰宅し、三人で食卓囲んであーだかうだと楽しく食事の鶏三昧。
さんざんの飲み喰ひの後、ふと障子を開けて路地の向かふを覗き見すれば、其処には矢張り白猫の姿・・・
(-_-)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　