蟄居裏

なんで「オシャレ・レタス」なの?

一晩中台風の只中に沈潜してゐたやうな、ワルプギスの夜。
普段から外れ歪んだ障子や襖が激しく揺れて、部屋側と廊下側を激しく往来する。硝子戸は其の裏側で、誰かが手のひらで忙しく叩き続けてゐるのではないかしらむと思ふほどの騒擾。鴨居に貼られた地図や対聯や、写真や布や何もかもがぼわぼわばうばうと動き浮遊し、凹凸のある床の畳と相俟って、部屋全体が靡き歪み蠕動してゐるのではないかと錯覚するほど。
北風の咆哮は朝日を見ても止まず、ただ、昨夜は庭を覆ってゐた厳しい雪は、陽光を浴びて溶け始めてゐた。三椏の花房の、其のひとつひとつを包み込むやうに積もってゐた雪も、こちらは花の体温によって淡雪が溶解していくかの如し。
(-_-)
             
改めて日記なるものを読み返してみれば、春節よりこの方工作活動と探査活動の連続で、一日も休みを取ってゐないことが判明した。因って今天は、自らに終日蟄居の自宅謹慎をば命じ、蓄積した諸事お片付けに専念すべしと決定せるらむ。
それにしても寒く、一旦布団に潜り込み籠もって仕舞へば、屋外で工作活動することなど想像を絶する世界なのだけれども、そこが人間様の不思議さよ。はなっから現場に出る気概で起床すれば、それはそれで寒さもなかなかの勢ひで跳ね返し、風花舞わふが暴風吹かうが出掛けることは苦にならないわけで、「気の持ちやう」とは所謂かういふことかと。
結局「題名のない音楽会21」は布団から首だけ出して覗き見てゐたのだが、首が妙な具合なので起きてしまった。起きても部屋が暖かいワケではないので、矢張り急ぎ埋み火を掘り起こし火鉢を暖めるのだが、幸ひ魔法瓶に湯が沸かしてあったので、先づは熱い麦茶を淹れて体を温める。
朝食はパンなので、いつものやうに玉子と共にベーコンを焼く。このところ甘藍を貰ふことが多かったので、千切りにして皿に盛ってむしゃむしゃと喰っゐたのだが、さうだ、先週発見した美しいレタスがまだ有ったことを思ひ出した。冷蔵庫にも入れずに、ポリ袋にくるんだまま台所の土間の棚に置いてあったのだが、このところの寒さで冷蔵と同様の効果を得てゐたやうで、取り出してみると瑞々しいままだった。
此のレタス、葉が球体を為さず火焔山の山襞の如く繊細に吹き上がり、真上から見ると球形の芝生のやうだ。サニーレタスほど葉足は長くないが、外側から1枚1枚剥いでいく構造は同じ。葉先は見たとおり実に柔らかだが、元の方の葉質は堅めで、ぱりぱりしゃきしゃきとしてゐて大変宜しい。さっと水で洗ってから、包丁などは用ひずに手で千切ってボウルに入れて、千切りのにんじんやスイートコーンなどと共にドレッシングで和へて食べる。
さすがにこの寒さに冷たいサラダなど、と一抹の躊躇はあったのだけど、心地よい歯触りとほろ苦さが爽やかで、油っぽいベーコンエッグとたいへん良く合ふのだ。彩り的には此の場にトマトなどがあってもよいのだが、林檎などと同様、体が冷ゑて仕舞ふので、春分の頃まではお預けだな。
(-_-)
            
             

今天午後のBGMはコレ。寒いときには寒い国の音楽が宜しい!?

北の詩情~シベリウス:珠玉のピアノ小品集

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そしてこちらはルイサダエスプリ
シューマン,グリーク:ピアノ協奏曲イ短調

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そしてもっともっと本読むべし! ちなみにこれは、心の片隅を鋭利な刃物で浅く切られるやうな作品。
魚は泳ぐ―愛は悪

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