検出再開

いにしへの精緻なる手の技

天気晴朗ナレド風強ク、終日吹キ狂ヘリ。
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今天より、雁合遺跡の緊急調査を開始する。ユンボによる表土剥ぎは非常に慎重で巧みに行はれたのだけれど、バケットの延伸半径外の部分や複数回の掘削によって生じた小さな凹凸は、人力で削平する以外に無い。先づ5mグリッドを設置し、調査区南端より掘削を開始せり。
ところによっては同時に検出も可能で、灰褐色の遺物包含層が残る部分からも、其の層が既に除去された地山面にも似た黄褐色土層からも、早速遺物が出土する。欠損した有舌尖頭器にはじまり、白色風化石材の剥片やチャートの石核残欠など。円形土坑かと怪しんだ黒色土と被熱礫の集まった遺構表面からは、いくつもの土器片が。各々精密に検出を続け、土坑側は遺構の規模を確認する為にミニトレンチを設定してみると、被熱礫の密度は先日の円形土坑と違ひ、比較的浅めの集石炉の如き様相に。そして遺構の埋土からはやうやう、文様時期の認識できる土器片が出土するに至り、縄文早期撚糸文 et 押型文期の所産とほぼ確定。ミニミニ石鏃や黒曜石片も加はって、蒼々たる遺構の期待が高まる。
一方すぐ隣のグリッドでは、早期の地山面に相当する黄褐色土よりナイフ形石器も出土し、旧石器的な様相に。斯くして先年、百本近い石槍を発見した宮西遺跡と同時期に、段丘上でも人々が活動してゐたことが証明されつつある。
今日現在、先日発掘した早期の炉穴と円形土坑を中心に、ほぼ同時期の集石炉や其の下に眠る旧石器層が同時に露呈された状況にある。旧石器面には上層の黒色土からの染み込みとも、植物根などの撹乱とも、遺構ともしれぬもやもやとした朦朧体の如き広がりが存在することから、住居址までも射程範囲に想定して、再検出工作は明天へ。
兎に角この強風、寒風木枯らし吹き荒ぶなか、爪先も指先も鼻先も舌先も全て悴み、更には重機が動くたびに巻き上がる砂埃にもめげず、八千年前に意識を移行して果敢に調査を継続するのであった。我々に与へられた時間は、約一週間・・・
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