古窯体

里山はやうやうの錦繍にて

昨天の展示工作の完全なる続き。
編年を重視してメソッドに従って古い順に並べることには、いったいどのやうな意味が有るのかしらむ。勿論、編年は考古学的情報整理の為に必要欠くべからざる作業項目だらうが、それが全てでは決してない。
今回の展示事例では、渥美古窯出土の優秀文物を数回にわたって事前選別し、とりあへず代表窯ごとに群をなして陳列しておいたが、古窯製品に関しては例へば機種別且つ年代別にその形状の変化を観察することも出来るし、骨董的観点から自然釉のよく流れた製品を集めて陳列することも可能だ。
また、日常雑器としての器種(片口鉢や椀・皿など)、宗教的用途(陶製五輪塔や子持ち器台、骨蔵器など)、建材的用途(瓦など)、生業的用途(陶錘など)別での分類も可能だ。
それにしても、大甕が居並ぶ様子は圧巻だ。我輩も嘗て古窯内部に残された複数の大甕を発掘したことがあるが、狭い焚き口から床の傾斜した焼成室内にこのやうな大型製品を据ゑて行くには、数人がかりで息のあった行動が必要だ。大甕は勿論、小柄な大人でも身を縮めてしゃがんでみれば入ることができるほど巨大なのだが、其の底部は驚くほど小さく、また焼成後の其の重量もイメージに反して軽やかだ。まさに、大量生産を前提とした職人芸の骨頂を其処此処に見ることが出来るのだが、見るだにへたくそな仕上がりのものも玉石混淆と集積されており、人間らしさが生々しく伝はってくる。
普段は余り展示されることのない焼台も、今回は展示対象文物だ。斜面を水平に保ち、其の上に焼成する器物を置く為に柔らかい粘土の状態で床面に並べられていった焼台だが、薄暗い窯体の中で受け取った粘土塊を手際よく、瞬時に床面に投げ置いたやうな速度や、生々しく残る工人たちの指跡や、さまざまな夾雑物(籾柄や藁だったり小石だったり)を豪快且つ繊細に包含したまま高温で焼成され、製品の運び出しとともに掻き集められて廃棄されて行く・・・ 窯道具には製品には見られない物語をも看取することが出来るのだ。
(-_-)ホント?
       
展示本体は、明天完成の予定にて候。
(–_–;)ホントに?