夏のただ中

集合せよ!

地面に坑を穿ち、過去を探る。
足下の地中に眠る無数の石器。砂利や砂や、砂礫や粘土、そのまた下に堆積した泥炭は、いったい何時の頃のもの?
炎天下、無数の剥片や石器、土器片を探る若者達の姿。それを見つめる我輩や、人々の好奇の目。今将に、一万年の眠りから覚め、オゾン層を貫通して地表に達した紫外線に晒された石器たち。若者達の手のひらに乗せられた剥片を、嘗て生み出した人々は何処に行ってしまったのだらう。
一万年前の、さまざまな道具の問ひかけに、われわれは何をだう答へればよいのだらう。 
此の世も宇宙も世間様も、津々と音無く堆積し続ける時間の廻間に、ただ何気なく挟まってゐるだけのこと。ただそれだけのこと。ただそれだけのことが、いちばんたいせつなこと。ただそれだけのことが、かくもせつなく重要なこと。
そんなただの、夏の日の一日の、一コマの一部分のこと。
ただそれだけのこと。