雨多しと雖も、人出戻る也

界隈

今天は台風一過の晴天・・・とはいかず、朝から憂鬱に曇って湿気も高いまま。
巨大な大気の渦巻きが、南海洋の水蒸気を全て集め寄せ、列島の南の果てのか弱き島々を蹂躙したのだ。蚕棚部屋には夜間のみ、強力な冷房が入るが、夫々の区画はカーテンで仕切られてゐる為、冷気が其の隙間からほど良く侵入してきて、棚の内部は丁度良い室温になるのだ。
しかし此の空調も、朝8時で自動的に切れる仕組みらしく、徐々に蒸し暑さが伝はつにつれ、一人また一人と棚から這ひ出して行く。勿論、予定した観光に出かける者も居るのだらうが、蒸し暑さに耐ゑ切れず、やむを得ず出て行く者もあって、滑稽な事だ。
我輩は、午前7時頃に必要以上の大きな音を立てて身支度整へ出て行った二人組み(二人とも茶髪でアロハ姿、二十歳くらいでかういふ宿には似つかはしくない大きなスーツケースをごろごろ引っ張ってのご出立? 朝から気忙しくケータイ操って、女の子のグループと思はれる相手先としきりにコンタクトを取ってゐる。)の騒音で目覚めて仕舞ひ、そのままふらりと国際通り方面へ。
県庁周辺では何本も街路樹が傾き、大きな枝が折れて方々に集められており、壁新聞を見ると国道58号線では何台か自動車が横転してゐたらしく、妙な形をしたレッカー車が事故車を運んで行く風景もあった。近くのバス停で、バスを待ってゐるのか佇んでゐるのかわからんおばあに聞くと、ここ2年くらいは台風の襲来が無かったので、久しぶりに驚いたさーとのこと。「あなたさま」(とおっしゃった)は内地の何処から来たか云々てう世間話を数分して、戻る。そんなうちにも時折小雨来たり、雲間らしき部分は無くて何となくなんくるないさとてぃーだがあんあたりにゐてむーちんぐぁさ、どんどん蒸し暑さが増してくるのだけは皮膚感覚で感じることが出来た朝。
予定してゐた壷屋界隈、やちむん通りの散策は中止と相成りまして候。
                
Breaking & Entering
            
BREAKING AND ENTERING  (邦題:『こわれゆく世界の中で』)
1本の作品にしては込められたものが多く、非常に重い内容だが、もしアンソニー・ミンゲラらしさてうものがあって、それが現代的な多様性を複雑に交錯させることから派生する低周波のやうなものであるとするなら、意図したものは半分くらいしか画面に表現されなかったのではないだらうか。
ジュード・ロウも35歳、大人の建築家をなかなか苦労して演じてはゐるが、もとより陰のあるジュリエット・ビノシュや、素顔を曝け出したやうな生々しさで接するロビン・ライト・ペンにはかなはない。倫敦はキングスクロスの再開発事業に故事の舞台を据ゑ、ボスニア内戦による難民(移民)問題や階級社会の問題、更には離婚や別居、不倫問題まで詰め込んでいくために、なかなか話の均衡が保たれないまま半ばまで進む。ただ、だうしてもジュードとジュリエットの偶然で不思議な関係が、恋愛感情を伴ったものにまで発展して行ったことに対しては腑に落ちないままなので、最後まで煮へ切らないものが残ってしまふことは確かだらう。
嘗て『イングリッシュ・ペイシェント』では禁断の愛を描き、『コールド・マウンテン』では切ない純愛を描いた監督のこと。日本語の解説では「真実の愛」の本質に迫るなどと書かれてゐるが、大仰な謳ひ文句に到達するまでにはまだまだ、幾星霜の年月がかかりさうだ。
個人的にはまうちょっと、変貌し続ける大倫敦の風景が見たかったな・・・
              
Breaking and Entering (hb) (An Inspector Ghote Mystery) Breaking and Entering Breaking and Entering: Burglars and Burglary (Wadsworth Contemporary Issues in Crime and Justice)
                     
                       
さて、今天は巴里祭、熊野那智の火祭り、そしてまた、極めて個人的な偉大な記念日。
20年目の正直とはまさにこのこと?!