人知の及ばざる処なりけり

街の町たる所以

偉人の行く末を案じる人は多いが、偉人の向かふ先に立ち塞がる障害も多い。
沖縄本島での各種隠密行動をほぼ予定通り終了し、あとは石垣行きの船を待つ身に辛き置炬燵、たった四杯で夜も眠れずの心境も去ること乍ら、乗船までの残り時間を優雅に蒙昧に、模糊奔放自由に過ごさむと町歩きに出るや否や、フェリー運航主体である有村産業の事務所から電話入り、「あのー、台風ですから今晩の船は出ないんですから、お知らせいたしまーす」とのこと。極めて南方的な陽気な対応でのお知らせであるが、其の内容は重要で、嬉しくもあり悲しくもあり・・・
此の場に及んで何するものぞ。木賃宿の支払ひも済ませ、昨夜は沖縄の現場で活躍せらるる有志一同との会食も終へ、あとは夕方遅くに預けておいた荷物一つ引き取って、いざ乗船ばかりなるの意気込みも瞬時に萎へ、如何にしつることどもぞや、よや。
それにしてもなんだね、今回の台風様の巧みな進路予想には驚くばかり。まさに、偉人の行動を予め察知してゐたとしか考へられぬ位置と時間的配分での大接近だ。自宅陋屋に居ても雨漏りや各種浸水の心配は尽きないものだが、南島にても台風様と斯くの如き縁があらうとは予想外の想定外。
さても、先づは我が身の行く末や此の先の行く末の按配をあれこれと、早急に予定変更致すことこそ吝かに非ずとも、いやんぬるかな、台風の構造も立体的螺旋ならば、余計な不安も二重の螺旋構造にて、今晩の便ばかりではなく偉人の期待せる三日後の次便さへも現状では運休の可能性極めて高しとの仰せ。
これまた如何にしつることどもぞや。相手が自然の偉大な大気循環に起因せる現象なればどーにもかうにも無いワケであって、先づは要相談の御相談と相成りまして、港の有村事務所まで自ら進んでのご足労願ひ申し奉りたりける。
兎に角、取り立てて急ぐ旅でも無いことはないのだが、目的地たる台湾島に到達せねば全ての故事は開始されないワケであって、旅程や出入国の工夫按配も含め、此処は先づ、ゆるりゆるりと参らう。
人生同様、元来旅や放浪に予定など有って無きが如きものなれば、大仰に騒ぎ書き立てることのみのご愛嬌にて、此の場はお茶を濁しておきませう。
現状:午前中から風強く、午後からは一時間に数回、スコールの如く雨降る。10分も続かないのだが、忽ち晴れてぎらぎらと太陽光線降り注ぎ、蒸し暑さは徐々に増してくる様子。国際通り周辺はビル多いので、ビル風で路地口に立っていることも難しいほど強風が吹きつけ、パタリと止む。そして再び灰色雲が高速で飛来し、小雨の気配。まさに、台風の接近を肌身で感じる予兆に満ちた気象状況。