梅雨半夏

此の世の華、蒼き花

今天是半夏生
天上天下地上地下に梅雨の毒気が充ち満ちて、遂に半夏なる毒草の生じるの頃。梅雨の黴気は人間様の肺臓をも容易に蝕むが、呼気を通じて深く人体に浸透した毒気は、やがて人心をも蝕むのだらう。
それにしても、梅雨は何処に行った?
(−_−)
           
埋もれた歴史を掘り起こす。
其の事にいったいどれほどの意味が有るのか? 先に逝く者が幸せであるやうに、地下に眠る遺跡も亦、幸せである。現在とは隔絶された、停滞した時間次元時空に存在し、現代人の気紛れや偶発や、神々の悪戯に因って目前に出現する。
それでは、掘り起こされた遺跡はだうか。遺跡の眠りは現代人と現在に因って撹乱され、失はれた過去は脚色復元され、残された文物は遺跡と隔離される。嘗て汚穢と植物と野生と神話に満ちてゐた大地は各種の金属器によって掘削削平され、無機質で衛生的な化粧が施される。果たして其処にいにしへびとの息遣ひは残留しうるのか。
幻視の禁じられた歴史の復元など、果たしてあり得るのだらうか。神話の考慮されない歴史など、如何ほどの意味が有るのだらうか。
死者は常に幸ひである。生老病死の恐怖も今更無く、例へ不幸な死でさへも語り継がれて美化される。過去は常に甘美であって、現在と言ふ時間の呪縛から解き放たれた者は、常に幸ひなのだ。死を内包した遺跡は、時間の堆積によって脱脂され、其処に降り注いでゐた陽光や闘ひの痕跡でさへも希釈され、謎は純粋な謎として透明なまま凍結されて行く。
語り部の言霊に耳を欹てぬ者に遺跡を解析する資格も無いはずなのだが、現実はだうだ。地理風水を知らぬ現代人が、過去を暴き続けてゐる。奇妙で貧相な想像力は、いったい何を復元し得るのか。情緒を尊ばず、其れを用ひない研究には、最早微塵の興味も無い。
死者を善く送り、死者を好く尊び、死者の声を能く聞くべし。そして、死者の用ひたさまざまな物を自らの手で掴み、現代の陽光に翳し透かし、過去を透視せよ。目を閉じて、過去の風水に思ひを馳せ、情緒にて「能く」思へ。
(−_−)