祈りの所在

朱門扉

今宵満月雲の陰、何処に居ます梅雨空の、山の彼方の朝ぼらけ、世々経るうちの行く末を見む。
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恐らくの熱帯夜。身の回りの全てのものが湿気を孕み、或る物は膨張し、また或る物は溶解する。
湿気は黴を育み、黴は空間に邪気を横溢させる。気怠さは邪気の一種であり、容易に人心へと感染する。倦怠の蔓延った空間は本来、火にて浄化すべきだらうが、都会人里では其れもままなるまい。
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今朝も、半島から水蒸気引かず、周囲の全てが霧とも靄とも知れぬ灰白色にけぶってゐる。
二千年前に埋められた秘密の壺を一目見やうと、近所の小学校から見学コビトが押し寄せる。今時は担任も何もかも、W=ダブルになってゐるのですね。見たこと有るやうなおじさんの話を、神妙な顔で聞く者あれば、退屈で死にさうな表情で天を仰ぐ者有り。コビトたちの安寧への祈りは果たして、死者に届いたのであらうか。
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此のやうな逡巡の後、丁寧に埋められた頸無し壺は、ほんの数分の後我輩の一息一気にて掘り起こされ、ご尊顔拝しつつも洗はれ、眺められ、空洞に充満してゐた謎の解明段階に移行したワケです。
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学生諸君への晩餉の供応は、秘蔵したりけるもののけ肉にて行ひまして候、
いつしか雨も上がり、薄れてきた雲のまにまに赤緑色した月が昇る。
そして、日もまた昇る・・・