ドーナッツ屋の品格

コビトの品格

男も女モスなるドーナッツをば久々に喰はむと欲し、ドーナッツ屋へ。
此処ではいまどきではフツーの制度になってゐる、所謂自分で好きなものを取ってレジに出向くセルフ式で、既にぎょうさんの子連れ組みが並んでゐる。そもそも、気に入らないのがこのプラスチックのトレーとトングだ。此の店のものは違ふやうだったが、セルフ式のパン屋のそれは見てくれを重視した結果なのかおおむね表面がつるつるしたものが多く、クロワッサン一つ乗せただけでしゅるしゅると滑ってしまふのだ。
パンなどは複数買うことが多いのであって、トレーの上にパンを乗せれば乗せるほどちょこっと傾けただけで滑って行くので、傍目にはパン屋の中で底抜け脱線ゲームをしてゐるやうな状況になってゐるのだ。勿論、プラや金属製のトングだってトレーに乗せると滑って行くので、先に乗せたパンとの比重均衡をとることが更に難しくなり、実際何度かパンを滑らせて床に落としてしまったヒトを見たことがある。
パン屋への愚痴はさておき、ドーナッツ屋の方で憂慮すべきは矢張りコビトの存在だ。ヤンママや茶髪ママ、ケダママやモンキーパパに連れられたコビト達は、親の静止も聞かず各々がプラトングを持ち、必至になってドーナッツを挟まうとしてゐる。哀しきはコビトの宿命であり、3段あるドーナッツの棚のうち、彼らの範疇は一番下の段しかないワケであって、陶然全てのコビトが大きなプラトングを使って総攻撃する為、ドーナッツの原形をなさないほど破壊され残滓の如き様相を呈するものももいくつも有る。また、驚くべきは保護者たちの反応だ。先頭の親子はドーナッツがうまく挟めないことに癇癪を起こしたコビトが発狂したやうに泣きわめき、手の届く範囲の商品全てにプラトングで攻撃を開始しており、茶髪ママが武器を取り上げやうと必死に戦ってゐる。隣の組はヤンママのコビト連れだが、放任主義を体現した如きありさま。コビトはコビトで勝手にドーナッツを突っつゐてゐるが、ヤンママも別のトレーを持って異様に大量のドーナッツを取ってゐる。1週間分を買ひ溜めしてゐるのか、はたまたお遣ひ分なのか、そんなことはいらん御世話だが、こっちが心配になる程の量だ。かと思へば一人で並んでゐた中年女性は、お目当てのドーナッツの前に来るときれいに並んだものの手前からではなく、狭い空間にトングを横にして手を差し込み、後ろの方に並べられたものを取り出してゐる。恐らく、ぎうにうだの豆腐だのも常にこのやうに後ろの方から取り出して日付の新しいものを買ってゐるのだらうが、見るだに浅ましく見苦しき習慣である。
兎に角、初夏夕刻値千金萬金丹。ドーナッツ屋店頭の些細な一コマに、其のヒトの人となりや家庭での躾や人柄や品格などの一端が露骨に現れてしまふのであって、偉人たるもの、ドーナッツ一つ買ふにも緊張感を持って臨まねば・・・
(−_−)?!
人の振り見て我が道を行け!?
今回の購入品目:ポンデ・アーモンド×1、ポンデ・ダブルチョコレート×1、ハム・チーズパイ×1、アップルパイ×1、以上。
               
女性の品格 (PHP新書) 大人の「品格」が身につく本 一流の品格、三流どまりの品格 礼儀覚え書 品格ある知性をつくる24の方法 (青春文庫)
          
品格など、本を読んでどーにかなるものなのでせうか?