墳墓解体

大解体

解体され行く高松塚古墳の石室の様子を、テレビの画面で見る。
黒黴に浸蝕された女性群像の様子。墳墓を構築したいにしへ人の偉大さと、其れを開けてしまったいま人の宿命の哀しさ。それにしても、此の石室は魂の奥津城であり、安寧の宇宙空間であったはずなのだが、学問だか学術だかは知らんが、解体工作担当者の先生方には墳墓に対する畏敬の念の欠片さへ見られない。
報道発表される短時間故のことなのか、はたまたそもそもそんな畏怖畏敬など存在していないのかは即断出来ないものの、瞬時に伝はる雰囲気だけは隠しやうがない。
SF映画の一場面のやうな、宇宙船の内部のやうな大仰な機械が組まれた工作現場で、特殊開発されたクレーンが分厚い壁石を挟み上げ、移動させて行く。これ以上の黴を付着させない為?、工作者は白い作業服を来てゐる。運び出された壁画付きの石材は、近くの保存修復工房に運搬され、これから長時間かけて処理されるのだと言ふ。
そもそも我々は、この古墳墓の何を保護保存しやうとしてゐるのか? 原位置から遊離された石室に、もはやどれほどの存在意義が有るのだらうか?
(−_−)
          
                

高松塚古墳は守れるか 保存科学の挑戦 (NHKブックス)

高松塚古墳は守れるか 保存科学の挑戦 (NHKブックス)