春の夜に推して知るべき涙哉

まあちょっと、お茶でも飲みませんか?

閉塞感?
「無い」と言へば嘘になるな。でも「有る」と言ったところで、具体的な事例は珍怪で卑近なものばかり。
日常のくだらない事、出来る限り係わりたくないし・・・
見たところ、日常の約6割はどーでもよいくだらない事で結構緻密に構成されてゐるやうだし、世間話と四方山話と土産話の大半は自慢と偏見とどーでもよいことの集合体だ。
建設的な意見も態度も発言も反応も無ければ、親切心も忠誠心も依存心も生まれないのは当然だらうし、信頼関係の生まれる余地も無いワケだ。
通じない人には何をだう話しても通じないことが殆どだし、通じる人には言はずともまさに以心伝心。対面して会話をしてゐても、意味の通じてゐないことは間々あるし、電話だけでも情緒を感じる事も有る。
しかし、だ、閉塞感は諦観に通じ、諦観は遂には悟りを生む?
(−_−)???
       

       
 山路を登りながら、かう考へた。
 智に働けば角が立つ。情に棹させばながされる。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟つたとき、詩が生まれて、畫が出来る。
 人の世を作つたものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向こう三軒両隣にちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行く計りだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくからふ。
 越すことのならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容げて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人といふ天職が出来て、ここに畫家といふ使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い
(中略)
 世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏のごとく、日のあたる所にはきつと影がさすと悟った。三十の今日はかう思ふてゐる。――喜びの深きとき憂いよいよ深く、楽みの大いなるほど苦しみも大きい。これを切り放さうとすると身が持てぬ。片づけやうとすれば世が立たぬ。金は大事だ、大事なものが殖ゑれば寝る間も心配だらう。恋はうれしい、嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかへつて恋しかろ。閣僚の肩は数百万人の足を支へてゐる。背中には重い天下がおぶさつてゐる。うまい物も食はねば惜しい。少し食へば飽き足らぬ。存分食へばあとが不愉快だ。……
       

        
けだし名言。しかしこれでは漱石先生、胃も溶けるはず?
そもそも明治時代から既にピロリ菌は存在して居った??
    

「草枕」変奏曲―夏目漱石とグレン・グールド

「草枕」変奏曲―夏目漱石とグレン・グールド