妖怪パンチングオヤジ

お口直しにポン・デ・アーモンドでも召

巨大銭湯へ。
(ちなみに今天の記事は「徹底的にどーでもよい話」なので、我輩のうたかたの徒然に福音を求める者は読まんでも宜しい)
     
半年ほど前、市内に新しい別の超級銭湯が出来たらしく、そっちの方に客がながれたらしく、こちらは何やら閑散とした感じ。その御陰様で我輩はゆっくり湯浴みできて嬉しいが、潰れてもらっては困るのだ。
今夜は客の少ない割に何故か小さな女の子を連れた若いパパさんが4組も居って、妙だ。うち2人は茶髪のヤンパパだが、コビトの野生に一切制限を求めない放任主義者が2組居て、可笑しなことにコビト同士が女の子とは思はれないほど対抗心と凶暴性を剥き出しにして、激しく叫び乍ら湯を掛け合って戦ひ続けてゐる*1。余りの騒がしさに
「コレッ、ウルサイッ!」
と言って嗜めてやると、一人のコビトは父親が即身仏の如く汗達磨となって修行中のサウナ室に逃げ込んで行ったが、まう一人は邪悪な形相で我輩をじっと睨みつけるのであった。彼女は三歳くらいだらうかしらむ、既に髪の一部が脱色されており、その中途半端な感じから、ヤンママの余りにちょこっとやってみた、てう感じだ。行く末が案じられる瞬間であった。。。
さて、この銭湯には露天の湯船も有って、打たせ湯で滝修行が出来るやうになってゐるのだが*2、その脇にはベンチも置いてあるので、サウナ室で茹で蛸のやうになったオッサン達が全身から不動明王のやうに渦巻く湯気を立てつつ、入れ替はり立ち代はりやってくるのだ。我輩が約5分に亘る1本滝修行を終ゑて、半ば開きかけたチャクラを通じて意識を臨界点に持ち上げやうと、冷気に当たり乍ら座ってゐると、1人の毛むくじゃらの茹で蛸オヤジがやってきた。彼はいきなり水シャワーを開き、周囲に激しく水しぶきを撒き散らし乍ら水浴びを始めたのだが、冷たいせいか「ひぇー」だの「ひゃ〜」だのと矢鱈大きな声を上げるので大変五月蝿い。
さすがにシャワーは1分ほどで終わったが、今度は少しメタボリックな胸元を両手で平手打ち始めたではないか。その威勢の良さは驚くべき程で、ペチペチなどてう生半可な強さではなく、バチバチまたはバチッバチッといった火花が散るやうな感じなのだ。一見真っ赤になったゴリラが敵を威嚇する為にドラミングしてゐるやうな姿勢なのだが、濡れた胸を激しく両手で平手打ちしてゐるワケだから大きな音がするのも当然なことだ。例へてみれば、見たくもない大阪名物大回転パチパチパンチを至近距離で水しぶき付きで見せられてゐるやうなもので、言ふまでもなく我輩は頗る不快である。ワケもワカランし・・・
当の本人は半ばトランス状態になってゐる様子で、別段ヒトに見せつけるそぶりも人目を気にしてゐる様子も全く無いが、我輩はサウナ室*3に退散せり。ところがだうだ、数分後にそのパンチングオヤジ、なんとサウナ室に入って来るではないか。室内には我輩と、これまた茹で上がった子泣き爺のやうな風貌のおじいの二人。何かぶつぶつと独り言を言ひ乍ら、ボイラー近くの上段に鎮座したオヤジだが、余りの暑さに数分ともたず、やおら部屋の中央に下りて来てテレビの正面に立ちはだかった。なんと、仁王立ちになってテレビを見つめてゐたかと思った瞬間、またまたパンチングが始まったではないか。タオルの敷き詰められた木製の室内なので音こそ響かないものの、猛烈な速度で回転パンチをするのでひじょ〜に五月蝿く鬱陶しい。「我輩の安寧のひとときに何をするねん!」と先のコビト同様苦言を呈しやうと思った瞬間、やおら茹で子泣き爺さまが睨みつけ乍ら立ち上がり
「おいっ、うるさいっ!」
と一喝。
パンチングオヤジ、一瞬にして元気が消失し室外に退散するも、その時我らも既に10分近く高温に晒されて茹で上がり、降参して露天空間へ退散。何とも狐に化かされたやうな、奇妙なひとときを過ごしてしまった土佐。
    
今宵、半月。
     
タンタンパチパチ はくしゅぱちぱち (あかちゃんあそぼ)

*1:はじめは友達同士で喧嘩してゐるのかと思ったが、様子を見てゐるとさうではなく、此処で出逢ったのが百年目の如き運命のライバルが、今天此の銭湯で遭遇してしまったのだ

*2:激しい水流の1本滝と、比較的穏やかな2本滝の2種類が有るのだ

*3:8畳ほどの広さの三方に上下二段のひな壇がある構造。壁面には大きなテレビも設置されてゐる。