霊山へ

黄金色の靄に包まれし

西藏的神山聖湖巡礼を経て、日本列島的臍下丹田中央構造線上の霊山へ。
煙巌山鳳来寺の本質は山中他界。常に雲気を生じ天をも遮る垂直の大岩壁下、本堂の薬師本尊は地理根源の垂迹なれど根幹には非ず。
寺伝では、白鳳壬申年、理趣仙人が先づ千寿峯に居り、次に万寿坂に移って修行を重ねたが、或る時に大聖不動明王を感得して瑜伽の秘法を伝授され、三密の行法を修したことがはじまりてう。理趣仙人は陽成天皇の代に309歳で、かつて不動明王を感得した勝岳院の神窟に入定し、慈氏(弥勒仏)の下生を待ってゐるてう。
明け方までの雨の気配は去り、山頂からは靄の彼方に黄金色に光り輝く三河湾の姿。海の神々しさを全面に受け、大岩壁は更に人体の如く紅潮し、白雲とともに霊気を放射する。
今、人々にこの清浄なる霊気を全身で感得する能力は有るのかしらむ?
自然の伊吹を享受する能力は有るのかしらむ?
      
     
言霊と他界 (講談社学術文庫)  日本人の他界観 (歴史文化ライブラリー)  沖縄と本土の信仰にみられる他界観の重層性