愛でよ喰らへよ

目映き輝き

ふと入った超級市場の一角。
何気なく並べられた片口鰯のその肌の銀色の、きらりと光り艶やかに、美しきこと美しきこと。
小箱ごと買ひ持ち帰り、さて、市場内部の特殊照明装置の下でのみの刹那の輝きかしらむと思って電球形蛍光灯の光に照らされた台所で取り出してみても、果たしてそのしなやかな金属光沢は変はらず。
大海に群れ泳ぐ生前の彼らの姿を想像するまでもなく、生命の真の輝きにはほど遠くあれども、死して猶この艶やかさよ。
小雨けぶる冬の夕暮れに、プラスチックのトロ箱に並べられた銀の小刀たちを、目で眼で愛でて撫で愛でて。
炙りて喰らふ。
貪り喰らふ。
御頭より喰らふ。