630円分の何か

鞠の如き花なりき

歯科で我が身にいったいどのやうな治療が行はれているのかを知ることは、至難の業だ。
今宵は二度目の歯医者へ。先週処置した詰め物?を除去し、これまたしきりに金属棒で歯の先端を叩く。これほど叩かれると、まだ完全に神経組織が死滅除去されていないやうな感じがして、「あんほあふ、まぁいやいよーないあひまう=何となくまだ痛いやうな気がします」と陳述すると、「ええっ?!おかしーなー、まだ死んでないかなー」などと呟き乍ら、例の先端ギザギザハート式金属棒で穿孔奥の方をがじがじと掻き出すやうな感触。「うーむ、膿はもー取りきってきれいになってるけどなー。まだ根っこの方が響きますか?」と再び金属棒攻撃。「はひ、まぁーひょっほひひいあふ=はい、まだちょっと響きます」と必死で訴へると、「バキューム」と歯科助手に命令が発せられ、茶髪(一部金髪)姉さんが吸引管をかなり奥の方に突っ込む。其ノ後も先生「う〜ん、迷ふなぁー、ふ〜む、もー一回詰めとこか。いいですか?今週もー一度来てください」と言ひ終はるやいなや、超高速で根治薬をねじ込み、白いセメントでシールドされてしまった。これにて一件落着と思ひきや助手に一言、「レーザーやっといて」。命令が下るやいなや、お姉さまは隣のブースからごろごろと何か仰々しきロボットアームの機械を引っ張ってきて曰く、「ハイ、それぢゃーレーザーかけますから、暫くイーってしてゐてください」とぞ。あとは目にタオルが掛けられたこともあって、何がどーなってゐるのか詳細不明だが、感触的に歯と歯肉の境界辺り(所謂歯周病スポット)をレーザーが走査し、プラークが除去されてゐるやうな歯茎が焼かれてゐるやうな、隙間が洗浄されてゐるやうな、痛いやうな痛くないやうな、血が出てゐるやうないないやうな不思議な感触が表裏両面に感じられた。その間約3分。忽ち施術は終了し、口を濯ひで下さいとのお言葉に甘へて金属コップに自動注入された水でくちゅくちゅすると、血の欠片も歯の欠片も見当たらず、果たしてレーザーに因って分子レベルで何かが分解されてゐたのだらうか。其ノ後隣で盛大に歯を削ってゐた先生が帰還し、歯茎にほんのちょこっと何かの薬品を塗布するやいなや治療は終了。詳細尋ねるヒマもなく先生は電光石火で隣席に戻ってしまって、お姉さまも我輩のエプロン解ひて「今週必ず来てくださいね、おつかれさまー」と治療室を追ひ出されてしまったので、謎は謎のままの630円也。
第二回にしても、この医者がてきぱきとして良い医者なのか、そそくさと粗雑な医者なのか判断つかず、ちょっとざらつく歯茎周辺を舌先三寸で確認し乍ら、自転車で家路に就くのであった。
(-_-)?