ウンパ・ルンパの謎

誰の手?

ティム・バートンの本質は「寓話」だ。
ビートルジュース」「シザーハンズ」「マーズ・アタック!」「スリーピー・ホロウ」「猿の惑星」「ビッグ・フィッシュ」と書き連ねてみると、それぞれの物語りの大半が寓話であり、空想であり白昼夢であり、幻視であり虚構であることがわかる。「チャーリーとチョコレート工場」も然り。現実のやうでSFのやうで、夢のやうな空想のやうな現実だけど、どの入り口から入っても暖かな暖炉に辿り着くことが出来るやうな、そんな世界観。この幸福感に満ちた後味の良さは、どこから導き出されてくるのかな。
彼の作品でただひとつ、劇場で泣いてしまったのが「ビッグ・フィッシュ」だが、さすがにちょっと困ったよ。エンドタイトルが終はりかけても、止めどもなく涙が流れ、暫くはバツの悪さも相俟って立ち上がれなかったのさ。今回は涙こそ無かったけれど、何かとっても暖かな繭玉に包み込まれたやうな感覚で劇場をあとにしたワケでありました。
かういふ作品を楽しめる大人になるには、どんな生き方をしなければならないのかを一言で言ふのは難しいけれど、想像力の蓄積量が試されることは確かだな。夢の無い毎日だからこそ、こんなファンタジーが楽しめるヒトも居るだらうし、抱き続けた夢の延長として愉しむヒトも居るだらうね。理屈はさておき、言語や理屈や秩序や規範を超越した世界で遊べるかだうか、自分のホントの懐の大きさを試してみるのもよいのではないでせうか。
それにしてもティム君、よっぽど英国系の俳優がお好きの御様子。現在のパートナーのヘレン・ボナム=カーターは上流社会のお嬢様出身、今回のおじいちゃん役デヴィッド・ケリーは陽気なアイリッシュダンスを少し披露、そもそもチャーリーことフレディ君も英国産だし、不老長寿の吸血鬼Sir クリストファー・リーは歯医者さん(カフカにとっての父親の如き存在)、でもウンパ・ルンパは何処の国のコビト?
それと、パロディともオマージュとも知れぬシーン。とりわけ「2001年宇宙の旅」の猿人のシーンはかなり凝った使ひ方でしたね。実は僕も昔ちょっと思ったんだよ、モノリスがチョコだったら、ってね。
ところでしつこいけど、ウンパ・ルンパは何者よ?
(- + -)?

チョコレート工場の秘密 (児童図書館・文学の部屋)