花以て称へよ

いにしへびとのうつろなまなざし

謎は謎を呼び、謎は人を呼ぶ。
古代人の仕掛けた謎解き。安易な解釈を許さない、神秘的かつ凄惨な風景。それでゐて、森羅万象にカミを見ゐ出せないヒトには、決して解くことが出来ないばかりか、謎本体への接近すら許されない現実。原始の感覚と、現代的な理性。その不均衡から生じる情緒のゆらぎを手がかりにして、事の本質に迫る。例へそれが漸近線上の往還に終始したとしても、往還の摩擦に因る熱量の消費が親近感を喚起する。
いにしへびとが還り行くはずの、繭玉形の穴。ヒトより先に、その穴に葬られたるは、もののけに魚と貝と、漠然とした祈りとカミの後ろ姿。何を呼び、何を招き、そして誰を何処に送らうとしてゐたのか。
其ノ後、無数の貝殻と数千年の時間に覆ひ隠された古代の謎よ。いにしへびとの眠りを覚まし、徒に撹乱する者は誰だ。その者に、秘めたる謎の神髄を解き明かす能力は有るのか? 呼び覚まされた魂は、一体何処に還って行くのか? 

祖禰思ひ 手折りて捧ぐ 曼珠沙華

古代生命体ソマチットの謎 (イルカBOOKS)