せうゆ

黄金色に輝く也

今時の稲は殆どが早稲なので、既に稲刈り済んだ田圃が多い。
時折激しく通り雨あったり、急に雲間に青空が見へたりと、めまぐるしく変化する天気こそ颱風の骨頂。何見るワケでなくふらふらと、あてなく自転車で近所の巡検に出掛けると、美しくはざに掛けられた稲の束が雨に濡れて並んでゐる。脇の田圃には切り刻まれた稲藁が散り敷かれ、いい香りを漂はせてゐる。機械によって刈り取られると同時に脱穀され、藁は大きめに刻まれて播いて行く仕組みになってゐるのだらうね。向こうの田圃ではそんな稲藁が既に野火で焼かれ、黒々とした灰に姿を変へて地中に帰されやうとしてゐた。偉大な循環の一端だ。わが輩自身が、この偉大な循環の一部分に在るてう自覚は、さほど無い。さほど無いが、精神的には有る。
(-_-)有る
巨大颱風接近中の鹿児島産の、醤油をいただく。「かねよごぅるど」*1なる奇妙な名前だが、濃厚且つ甘口なのが特徴だ。名称としては「こいくちしょうゆ(新式醸造)」などと書かれてあるが、何が新式なのだらう? 原材料名としては、脱脂加工大豆・小麦・食塩・アミノ酸液・糖類(砂糖・果糖ぶどう糖液糖)・調味料(アミノ酸等)・甘味料(甘草)・ビタミンB1・乳糖と書かれてゐる。
一方、商店街のくじ引きの商品などで貰ったままストックされてゐる大手メーカーのものを見てみると、品名は「こいくちしょうゆ(本醸造)」とある。やはりこちらが本醸造とすると、何か新奇工夫された製法のものが新式醸造なのだらうね。次に原材料名は、大豆(遺伝子組み換へではない)*2・小麦・食塩、以上だ。最大の相違点は、アミノ酸や各種糖類の添加であることがわかる。即ち、長年所謂本醸造の醤油を使ひ慣れた人民にとっては、この南方由来の醤油は所謂甘口の概念を超越した別物であって、どちらかと言へば「つゆの素」のやうなものに近い存在であるのだ*3。事実、我輩が各種煮物にこの甘口醤油を使う場合、味醂は従来の半分以下、砂糖に至っては添加する必要は無いほどのものなのだ。何故にはなっから砂糖の入ったやうな醤油が作られるやうになったのかは謎であり、それが南方独特の味覚風土に由来するものなのか、何らかの歴史的背景の存在するものなのかは調査する価値の有ることであらう。
(-_-)どやさ?

味噌・醤油・酒の来た道 (小学館ライブラリー)

*1:商標はカネヨで、鹿児いま市の醸造会社だ。一方先に使ってゐたものの商標はサクラカネヨで、こちらは日置郡市来町の製造。社長が親戚同士なのだらうか?

*2:昨今、この注意書きが大流行してゐるらしく、駄菓子にまでも堂々とうたはれてゐる

*3:サクラカネヨの濃厚醤油さしみ用などは、かなりのとろみが付いてゐて、もはやこれはタレの領域に属するものである。名称は「さいしこみしょうゆ(新式醸造)」で、カラメル色素や増粘剤(キサンタンガム)なども添加されてゐるのだ