波濤の果ての

藤色の野アザミよ

荒れ狂ふ海をば見むと、雨混じり風吹く最中、いざ行かむ。
岬の突端は、それこそ近づくことさへままならぬほどの様相。泡立ち、煮へ滾る大波が次々と岩礁を陵辱し、全てのものを混沌の渦に沈める。崖中腹の自転車道にも、泡立つ飛沫が吹き上がって来るので、更なる上部を走る国道へ。足も掬はれさうな強風は言ふに及ばず、されど俯瞰した海の余りの美しさに息を飲む。
発狂したやうな海岸の様相と対照的に、沖の方に向かっては無弁に居並ぶうねりの縞模様が、灰色雲と一体になった水平線の彼方まで続いてゐる。雨足も風圧も更に強まり、一旦退散。これが昼過ぎのこと。
嵐に乗じて、最大音量で聴いたアルバムは・・・

Black Sea [2001 Reissue]


これで80年代風の景気を付けたあとは、楽譜を見乍ら真面目なお勉強で・・・

シューマン:ピアノ協奏曲
(目的はグリークの方。透明な第2楽章!)


あれよと夕暮れ時になり、いつしか雨も上がり、黄金色の夕焼けの兆しを感じ、再び岬へ。雨は完全に上がり、高さを三段に違へた様々な色の雲が、弱々しき青空の名残を背景に、赤・橙・黄橙・鬱金・薄桃・灰紫・灰色などに染まり乍ら飛行する。到底斯くの如き光景の撮影は無理と判断し、闇に沈むまで鑑賞。矢張り沖より無限に押し寄せるうねりの波頭が、北向きに変はった強風に砕かれて、絹のやうに裾を靡かせ乍らやって来る。時折薄紫色の、夜明けの如き淡き黄昏の欠片を映して、あはれなるほどに美しき哉。
明天は一過の晴天を約束され、満意のうちに帰宅。勿論今夜の音楽は・・・

AVALON-REMASTERED

ポツダム宣言記念日