深み絡み高み日和見

寄らば

ボクシングには興味のかけらの微塵も無いが、MILLION DOLLER BABY の本質はボクシングではなく、もっと深い別のところにあった。所謂枯れた魅力全開のクリント・イーストウッドや、落ちぶれてじょぼい姿に身をやつしたモーガン・フリーマンの醸し出す自然な雰囲気に包まれて、無邪気で無垢なヒラリー・スワンクの生命力溢れる演技が弾け、悲劇的な後半をいやが上でも際だたせる。「ミスティック・リバー」では何ともやるせない、息詰まるやうな閉塞感が表現されてゐたが、個人的には素晴らしい作品とは感じられなかった。確かにショーン・ペンの陰翳をよく引き出した、監督としての技量はさすがのものと思った。今回は自らの出演であり、イーストウッド氏は矢張り監督である前に役者であるべきかと思った次第。
西部劇や埃臭い刑事ものなどは殆ど興味無いし、メリケンマッチョな作品は勤めて避けてきた我輩のこと、イーストウッド氏の作品とて劇場で観たのはほんの数えるほどであるが、「マディソン郡の橋」('95)あたりでやっと構へずに観ることが出来、「トゥルー・クライム」('99)「スペース・カウボーイ」('00)あたりを最後にその名前すら忘れてゐた。勿論監督業や、作曲家としても活躍してゐたのだらうが、大御所が満を持して作ると、映画てうものはかうなるのだなあてうことを思ひ知らせてくれた。でもね、最後は介護や安楽死問題まで絡めて更なる深層に入り込んで行くのだけれど、美しく儚き音楽に彩られた最後に関しては、その更なるあとのことまで行く末を考へてしまい、個人レベルでは解決できない領域に放り出されてしまうので、ちょっと不満だな。
兎にも角にも、噂だけを頼りにして覗き見た作品だったけど、意外な深みに連れて行ってくれました。
(-_-)
はっきりしない天気なれど、懸案の大荷物が大搬出され、大約1年振りに三間打ち抜きの風通しが大いに良くなりにけり。
\(*=*)/wa…i!

ミリオンダラー・ベイビー (ハヤカワ文庫NV)