poisson d’avril

大発見!?

和歌山県で世界最大の埴輪が発見されたさうだね」
「へぇー、そりゃーいったいどのくらいでかいと、世界最大になるんだね?」
「少なくとも人間より小さくっちゃー、お話しにならんさ。世界最大てう以上、2階建ての家の高さくらいはゆうに有るてう噂だよ」
「そんなでかいのかい?! そんなにでかくっちゃー、動かすのに不便だわな。それに数も一つや二つじゃあるまいに」
「あたばうよ、埴輪っちゅーのは何十も並んでゐるものだからね、これから続々と発見されるワケさね。でもいくら大きいって威張ってもね、エジプトのピラミッドや中国の兵馬俑には適うめえさね」
「ピラミッドはともかくだよ、兵馬俑っちゅーのもそげにでかいもんだかね? 中国の家が2階建てかどうかはわからんがねー、何百何千と並んでゐる様子はテレビで見たことあるけんど、そんなにでかいもんだとは知らなかったねー。隣組の佐兵さんは三年前に農協で見に行ってきたと威張ってゐたけどね、いくら威張ってゐても、去年の暮れに死んじまったんだからもともこもないさね。なぁ、さうだらう?」
「さうだらう?!って言はれてもね、兵馬俑を見た影響で死んだワケぢゃーないんだから、さうもだうも無いさね。だいたい佐兵さんの婆さんがいけないのさ。骨董嫌いでね、佐兵さんの中国土産だってみんな捨てちまう強者なのさ。聞けば細川ガラシャの3代目の後右筆でね、天承院様の妾の乳母の娘てう話ぢゃーないか。道理で気の強いワケさ。婆さんだって何だよ、やっぱり農協で日光東照宮にでかけたのはいいがね、陽明門の前の石段で転んだはずみに家宝の鼈甲の櫛が折れただの折れないだの大変な騒ぎさね。困ったもんだねー中途半端な名門の出は」
「ところでその婆さんと埴輪は何か関係有るのかい?」
「それが有るだの無いだの、天下の奇遇とはこのことさ。婆さんの母堂様は紀伊の根来の出なわけさね。ほら有名な根来衆根来寺、その裏山全体が巨大な古墳だったてう仕組みなのさ。そもそもが去年の集中豪雨でね、奥の院の脇の崖が崩れてね、埴輪の足が出てきたワケさ。それがまさか世界最大の埴輪の足だとは、お釈迦様でも知らぬ存ぜぬ」
「お釈迦様の古墳てうのも有るのかね?」
「そりゃー有るに相違無いさね。古墳なんてうのはそもそも印度で発生しただのしないだの、本居宣長蒲生君平南方熊楠が言っただの言はないだの」
「随分伝聞推量当てずっぽうが多いね」
「あたばうよ、四月の魚っちゅーのは全体そんなもんさね」
「そんなもんかねー・・・」
「そんなもんさ」
「どんなもんさ?」
(-_-)

世界遺産年報〈2005〉

世界遺産年報〈2005〉