音の色彩

ローマの石垣?

オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)の所謂ローマ三部作と言へば、「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」であるが、発想における想像・創造力の豊かさやオーケストレーションの華やかさ、叙情性の深さなど、いずれの点を取り上げても古今希有な作品であると言へやう。三部作の各々が4楽章てうか、4つの部分から構成されてゐる。「ローマの噴水」は、夜明け・朝・昼・黄昏どきの4つの風景にいちばんふさわしいローマの4箇所の噴水を描写する。「ローマの松」は、4箇所の松林や松並木がかつて見守ってきた歴史的事実を描写。「ローマの祭り」は、古代ローマ・中世・ルネッサンス・現代の4つの時代の祭りを描写。交響詩てう分野はフランツ・リストに因って創造されたことになってゐるが、レスピーギの手法は斬新であり乍らも古典的な秩序を維持しており、色彩豊かで心地よい。彼の古典的な楽曲に対する研究の精華とも言へる作品が、「リュートのための古風な舞曲とアリア」であり、静謐で瀟洒な室内を連想させる作品だ。殊更有名な第三組曲は、イタリアーナ・宮廷のアリア・シチリアーナパッサカリアと、これまた4曲から構成されてゐる。たゆたふやうな物憂ひ調べや、儚き夢の如き旋律、まどろむ情緒の琴線に触れる作品。
確かにベルリオーズの祝祭的な雰囲気や華やかさも独特だし、ラヴェルの繊細な音の糸を紡ぐやうな音色の豊かさも魅力的だが、「交響詩」の名に恥じないレスピーギの構築力や雄弁な物語性、色彩感覚は別世界であらう。
聴いたこと、ある?
レスピーギ:ローマ三部作
レスピーギ : リュートのための古風な舞曲とアリア