夕されば

花以て斎く

もののけのかしらに宿るものは、汝誰そ? もののけのかしらを闇夜に葬り、時の力と産土に潜む諸虫の力を借りて白骨に帰依せしむる。命の胞衣よ。
花以て飾る。蔓草の意のままに、籠よみ籠持ち掘串もよみ掘串持ち、この岡に菜採ます児家聞かな名告らさね、木綿の白きに橙橘柑橘の鮮色加ふれば、これぞ小春に暖かき夢見心地となりにけるかも。
もののけのかしらを大地に葬れば、その日は冬らしからぬ陽気にて、松の葉に月は移りぬ、さ夜深けばいで来む月を高山の、峰の白雲隠しなむかも。
うつせみの命を惜しみ波に濡れ、伊良虞の島の玉藻刈り食む。敷浪の果ての常世いでませ(萬葉集巻の第一、二十四)