ザクロの心

これはカリフォルニア産

ザクロ、石榴、柘榴、安石榴。安石=安息国即ちペルシャ即ちイラン原産の果物。
Punica granatum(ピューニカ・グラナーツム)=カルタゴの粒、Pomegranate(英)、granatapfel(独)=種の多い林檎、granadier(仏)、lamman(アラビア)
ルビーの如き、血の如き鮮やかな色彩。昔の家の庭に植ゑられてゐたザクロは小さめで、毎年紅色の花をいくつも咲かせ、いくつもの実をたわわに実らせ、枝を揺らし、枝を撓ませ、つひにはどの実も大きく割れて、深紅の官能的な粒をのぞかせてゐたものだ。いつも実のいくつかは硬い枝ごと手折りて収穫し食べてみるのだが、余りの酸っぱさに半分も食べきれなかった。笊で潰して砂糖を入れて飲んでみたりしたが、何となくエグ味があって決して美味しいものではなかったな。そんなザクロの印象が一変したのは、パキスタンの路上での或る遭遇。遠目にはサクランボを山積みにして売ってゐるのかな?などと思ったのだが、近づくにつれてそれがほぐされたザクロの山であることが判明。脇には原始的なジューサーが置いてあり、注文すると大きなコップ1杯分を潰して作ってくれる。飲んでみると大変甘くて驚いたものだ。屋台の兄ちゃんがしきりに突っつくので何かと思へば、台の片隅に置かれた塩を入れて飲め、とのこと。試してみると甘さがより強調され、更に美味しさが増した。気温40度近いカラチの気候を考へると、誠に理にかなった飲み物てうことになる。もっとも、ザクロ自体も大人のこぶし大の巨大なものであり、我が家の庭のものとは種類が違うのだらう。原産国とされるイランでは、なぜか見かけなかったな。
次に連想されるのは、スペインアンダルシア地方のグラナダ。文字通りザクロの意味だてうことだ。アルハンブラの入り口の門にも、ザクロが浮き彫りにされてゐたし、アンダルシアの大地はなぜかザクロの色を思はせる赤みがかった印象だった。でもアラビア語ではラマーンと呼ぶらしいので、グラナダラテン語系の名前てうことかな。グラニュー糖は結晶の見える砂糖だから、グラナダはやっぱり粒々に由来した名前だよね?
そんなザクロも今や女性ホルモンであるエストロゲンを含む果物として注目されてゐるらしいが、有効成分はご多分に漏れず表皮や種の中に存在するワケで、別にみるみる毛が生えたりお肌がつるつるになることは無いとのこと。そんな気分になるのは勝手でござりまするが・・・
(-_-)