過ぎ去りし時代のことなど

幻日

11月も下旬だてうに、こんなに暖かくてよいのでせうか。とは言っても今天は強風の一日で、遮る物の無い畑地の真ん中では立ってゐると押し倒されさふになってしまうほど。でもその狂風にも、真冬の如き肌を切るやうな冷たさは無かった。
いにしへの人間の痕跡を追ひ求め続け、地中に眠る文物や堆積した時間の神秘に触れ、夢中になって足下を掘り続けてゐた。そこらじゅうに転がる石ころ一つ一つに、人為の痕跡や時間の付着を認知すべく、無限に見続ける。いくら目を凝らしても、見へない時間の壁は余りにも重厚だが、真の人為は寧ろ直感的に認知されるものである。定義や理屈はいくらでも付けられるし、ご託やオタクは無視すれば宜しい。遺物の創造主は遙か大昔に姿を消してしまったのだが、遺物に込められた意志は風化せず、今に残ってゐるものだ。
無限の石ころから目を離し、這い蹲りし地面よりふと立ち上がりつつひむがし空を眺めれば、十三夜のさやけき月の昇るらむ。
月の光の下では、見へないものも姿を現すのだね。