新月夜話

やはらかな色

冬の前触れ、木枯らしのかけら、きちがい風は僅か1日で去りにける。冬の兆しは身近の方々に、目に優しく香りもかぐはし。庭の片隅の石蕗の黄色い花々や、ハマグミのつぶつぶした銀色の花から漂ふ甘い香り。名残のランタナの脇では、すでに水仙の茎伸びて、三椏の花芽は日ごと膨らみたりけり。
昨夜見た、カイロにおけるアラファトの葬儀の様子。軍隊式の葬列で、行進曲風に編曲されたショパンの葬送行進曲が流れてゐたのは驚きだった。兵士に担がれた棺桶はヘリコプターに運び込まれ、埋葬地であるラマラへ。エルサレムへの夢叶はず。
前に鳥葬のことを書いたが、亡骸の埋葬地に産土同等かそれ以上の意味を求める民族も居れば、転生を尊び、ポア後の亡骸には執着を持たない民族もゐるのだ。
メメント・モリ。果たして人生は死への前奏曲なのか?
さておき、今日はヒンデミットの日なのだ。理由は無いが、我輩がさう決めたのだ。皮切りは劇的な展開と音圧の「交響曲ホ長調」。続いて「ウェーバーの主題による交響的変容」。いずれもバーンスタイン;ニューヨークフィル。
続いて3つのピアノソナタグレン・グールドの演奏なので、「グールド自身の歌声も一部ございます」です、ハイ。
最後は交響曲「画家マチス」、アバドベルリンフィル。以上で手持ちのヒンデミットは全て。よって締めはブゾーニ編曲のバッハ;シャコンヌにしておきました。
冬のかけらの、新月の宵。
ヒンデミット/交響曲<画家マティス>
バッハ/ブゾーニ:トランスクリプションズ