鳥の歌

シラサギの足跡

鳥が飛ぶ。
鳥には国境も無く、束縛も無く、自由の象徴のやうである。鳥は空を飛び、木々を渡り歩き、地上を歩み、そしてまた飛び去る。いにしへびとは鳥をカミの遣ひと考へ、さまざまな願ひを鳥に託した。地上を這うヒトの願ひを、天に御座るカミに届けるのが鳥である。葬られた死者のたましひを、天に届けるのが鳥である。
西藏ことチベットに行ったとき、ラサの郊外にある鳥葬場を密かに垣間見たことがある。そこは限られた僧侶と、死者の関係者のみが訪れることを許された場所なのであり、覗き見ることさへ禁じられてゐた。前日に行われた鳥葬の関係か、荒涼とした谷間の上空にはハゲタカが数羽、ぐるぐると舞ってゐた。そこには、遠目に見ても明らかに異様な平板状の大岩があり、人間の頭ほどの大きさの丸い石がいくつか転がってゐた。さふか、あの石の上で遺体は解体され、鳥が啄み易ゐやうに頭蓋や太い骨は砕かれるのだな。チベットでは土葬に比べて鳥葬は最高の葬法である。鳥によって天空に運ばれた死者は、より良い輪廻に入ると信じられてゐるのだ。
ベルリンの壁をぼんやり眺めてゐた時も、上空を自由に飛び行く鳥の姿が実に象徴的に感じられたものだ。鳥には国境も無く、束縛も無く、壁も意味を為さないのだ。でも、鳥が恐竜の末裔てうのは、ホントかな。
鳥のあれこれにつひて、いろいろ考へ思ひ巡らせてゐたら、鶏肉が食べたくなって参りました。
(^_^;)