尊大価格

今日の昼食

何たることか!
小澤征爾の企画による「東京のオペラの森」。音楽祭形式でさまざまなプログラムが公開されたワケだが、メインはリヒャルト・シュトラウスの歌劇「エレクトラ」。主役のエレクトラを演じるのはデボラ・ポラスキてうことは大いに評価いたすとして、問題はチケットの値段だ。S席三万六千円、A席三万二千円、B席二万八千円、C席二万三千円、D席一万八千円、E席一万円・・・!!! この人を見ずとも、この値段を見よ! 何をどうせよ、てうのかこの値段。
二十年近く前、海外から招聘されたオーケストラや歌劇団公演のチケットの値段が一万円に達し、呆れ返ってひっくり返ってでんぐり返り、裏を返してこむら返りを起こしたことがある。そんな逆流にめげず、どうしても見たくて聴きたくて行きたくて体験したくて、ウィーン・フォルクスオパーの公演チケット金一万円也を、眉間から血を流し乍ら清水の舞台から成層圏に向けて飛び出す勢いで購入したことがあった。当日はやはりプログラムも欲しいワケで、大変な大出血で優雅な数時間を堪能したあと、数ヶ月はひもじい思ひで日々を送った記憶がある。更には、2度ほど大歌舞伎に1万円を投入したことがあったが、これは、恋飛脚大和往来の封印切りがどうしてもどうしても見たかったからと、勘三郎勘九郎親子による連獅子がどうしてもどうしてもどうしても見たかったからだったので、いたしかたなからう。歌舞伎は弁当食べながらの長丁場、日がなだらだらのんびりと時間を楽しむてう意味では、高いやうな安いやうな。勿論バイロイト音楽祭の数十万円のチケット代も、人生の数日間をワーグナーの至福の音楽と共に過ごすことができたと思へば高くないのかもしれない。それならオザワのエレクトラが三万六千円しやうとも、どうでもよいではないかと言はれればそれまでのこと。価値観に基づく行動原理は経済をも凌駕するワケであることは重々承知のこと。承知の上のことだけに、余計悔しいワケのことなので、今夜は「バラの騎士」のワルツでもかけて、ツルハシ振り回して疲れた体と心を癒すのこと。
Richard Strauss ; Walzerfolge aus < Der Rosenkavalier > : Zubin Mehta, Berliner Philharmoniker
でも、カール・ベーム指揮、ウィーンフィルによるモーツァルトのレクイエムも、よろしうございますね。