大弛緩湯

かういふ暖簾ぢゃなくっちゃ

久々に巨大銭湯にでかける。平日、しかも夕方の銭湯は人もまばらで、気持ち宜し。ぶくぶくと泡が吹き出してゐたり、不気味な色が付いてゐたり、電気が通ってゐたり、水だったりといろいろな湯船があるが、お気に入りは屋外の打たせ湯とラジウム温泉だ。勿論ミニサウナにも入るが、水風呂は嫌いだ。見てゐるとサウナで茹でダコのやうになったオヤジたちが、水風呂にざんぶと飛び込んでゐる。サウナ内でのオヤジたちの会話を聞いてゐると、彼らはサウナで汗をかくと痩せると思ってゐるらしい。いかにもそんな気がするものだが、さういふ効果は無いものと思はれる。
ところでラジウム温泉にはさまざまな効能が掲げられてゐたが、ロイマチスリューマチのこと)や痔や湿疹、霜焼け、肌荒れ、打撲捻挫(手偏の大行列!)などと聞くと万病に良いもののやうにさへ思へる。結局ごく微量の放射能が溶け込んでゐるワケなのだらうが、「電気風呂」と並んで「放射能風呂」などと表記するとなかなか迫力有って宜し。
以前中国的朋友に「銭湯」の意味を尋ねられたことが有る。勿論漢字熟語であるので、個々の漢字は我が邦と共通の認識も有る。しかし「銭湯」てう単語は無いワケだ。「銭」は尻上がりのチェンと発音し、意味はお金。「湯」は高く平坦にタンと発音し、意味はスープのこと。よって直訳すれば「お金のスープ」という事になってしまひ、意味不明となる。日本人は「お金を払って入る湯」などと、意味を連ねると同時に省略し工夫して出来上がった単語だらう。そもそも大陸ではスープの意味であった「湯」を、熱した水てう意味に置き換へて取り込んだワケだ。では中国では「お湯」のことを何と呼ぶかと言へば、「開水」(カイシュイ)である。開いた水とは極めて感覚的な表現方法だが、一度沸騰させた水てう意味では英語の hot water と同様の考へ方だ。少しばかり暖めた水の方は「熱水」(ルーシュイ)と呼ぶので、熱量の増加に応じて「水」「熱水」「開水」と三段階の表現が有ることになる。不思議なことに「湯(お湯)」を一言で現す言語は殆ど無いワケで、ひょっとして日本の専売特許であるのやもしれないな。
de l'eau chaud(仏) warmes wasser(独) d'acqua calda(伊)
良くある笑い話だけど、実際に聞いたこと。日本に来たての中国人留学生、下宿の近くに大きな暖簾に「湯」の一文字を見て初めはスープ専門店かスープ料理の店だと思ったらしひ。しかし、男女別々の暖簾がかかってゐる意味が、1週間ほど不明であったてうのだ。銭湯と解ってからも彼は3ヶ月ほど出入りすることは無かったが、てうのも中国には基本的に湯船につかる習慣が無いことや、不特定多数の人達と裸で同じ空間にゐる状況を体験したことが無かったからだ。今ではすっかり日本式の銭湯に入り浸ってゐるとのことだが、来年留学を終えて帰国した暁には家に日式の風呂場を作ることに決めてゐるとのこと。両親がどう思ふだらうかしらむ・・・
とにかく今天は弛緩しすぎて多少のぼせ気味・・・(-_-)