天敵退散急急如律令!

見るだに邪悪な風貌だ

夏は昆虫との戦いを余儀なくされる季節でもある。梅雨の初め頃の年中行事はシロアリの羽化であり、何百何千という透明な羽が空中に煌めき、感動的かつ幻想的な光景だ。でも数分後には彼らの棲息場所である家の土台付近を特定せねばならず、日常生活を静かに侵蝕進行する恐怖と対峙しなければならない。そしてこの頃から、家の内部にムカデが姿を現し始めるのだ。
ムカデが我輩の天敵であることは以前にも述べたが、今日の明け方に出現したものは長さ10cm強で、恐れていたことに厳重に結界しておいた蚊帳の中に出現したのである。日頃から夜行性の彼らであるので、深夜におけるその気配には極めて敏感になっている。普通の昆虫と違って、彼らは本や書類や衣類の中に潜り込んで侵入して来る性質があるので、蚊帳でさえかなりしっかり敷き布団に裾を巻き込んで挟んでおくのだが、そういう中にさえ潜り込んで来るのだ。過去に2度も刺されていることだし、そのうち1度はやはり蚊帳の中で刺されているので、就寝中も1秒たりとも油断は出来ないのだ(ちょっと大げさ)。今朝のムカデは思ひ出すだに恐ろしいことであるが、右上腕に這い昇って来たところに気付いたわけで、いまだにそのちょっとひんやりした体の感触が忘れられない。前回は無意識のうちにもぞもぞと動く何かを振り払おうとして触ってしまい、見事に刺されてしまったわけだが、今回は日頃の訓練(反復横飛びや垂直飛び、踏み台昇降など)の賜物で、春風鋭利に電光を斬るが如く瞬時に振り払うことが出来たわけだ。下手に腕の上で押さえ込んでしまっていたら、刺されていたであろうことは火を見るより明らかである。なほも掛け布団代わりのタオルケットに潜り込もうとするムカデであったが、常備している専用のトングで挟み、オンマニペメフム唱えつつ殺虫スプレーを噴霧するのであった。
こんな強力な殺虫スプレーでさえ、なかなか効かない恐ろしい昆虫が、このところ急激に増え始めた吸血アブである。それはスズメバチほどでもないが、ハエより数倍巨大で邪悪な風体と羽音でぶむぶむ飛び回り、隙あらば人間であろうが動物であろうが皮膚に取り付きちうちうと生き血を吸うという恐ろしい昆虫だ。狙いを定めて叩き落としても死なず、窓辺に追いつめてスプレー噴射しても、巨大な羽音を立てて当分生きているという生命力の強さだ。このところ毎日数匹が家に侵入してくるので戦っているが、いずれは襲われてしまうのではないかと恐れているのだ。
こういう恐ろしい昆虫のことを考えていると、蚊虫などはちっともたいしたことは無さそうに思えて来てしまう。今でこそ蚊虫がマラリアなどの病原体を媒介する可能性は極めて低いが、将来的には恐ろしい敵になりそうなことは確かだ。でも、もしもセミやトンボが吸血性であったりしたら、今頃の山野は恐怖のフィールドと化すことだらうな。トンボもあの大きさだから安心して眺めていられるが、化石に見られるやうなムカシトンボくらい(1m)あったら恐怖感が先立つだろうな。マルムシもよく見ると三葉虫の末裔のやうな風体だし、巨大だったら怖いな。カミキリムシやクワガタムシ、バッタやコオロギが巨大化したら、怖いな。カマキリもイヤだ。とにかくなんとか今くらいの大きさでとどまっていただくやうに、よく言っておくつもりではある。
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