単身単車単走単旅

昆虫のやうでもある

車が故障していることもあって、バイクで走り回っているのだけど、時々「気持ちよさそうですね」なんて言われる。そーねー、確かにこの時期走ってる分には防寒の心配も要らないし、気分よく走れることも確かだ。でも長距離となると話は別だ。真夏の日中、舗装された路上の暑さは想像するまでもない。信号で止まるたびに足下から不快な熱気が湧き上がってくるし、それより何よりも溶鉱炉の如きエンジンは股のすぐ下なので、熱気は相乗効果で5倍に膨張して昇ってくるのだ。友人曰く「股ぐらに火鉢を挟んでいるようなもの」と。まさにおっしゃるとおり。それと、当然頭はヘルメットを被っているわけで、どんなに高級なものであろうが安物であろうが、文句なく暑い。これさえ無ければ、ツーリングもどれほど心地よいものになるかと思うけど、安全のためには致し方ないわけだ。次に問題なのは、虫かな。とにかく夏の間は都会のど真ん中はさておき、心地よく走れるところ(田舎か僻地が多い)ほど人口より虫の数が多いわけで、小さな羽虫は目鼻口に、カナブン、セミ、バッタなどの比較的大きな飛行昆虫はバイクの速度もあって体に突き刺さって来るし、運悪ければヘルメットのシールドや衣服の上で自爆状態となって悲惨なことになる。彼らの体液は恐ろしいことに酸性で、エイリアンほどではないが付着したものをどんどん腐食させてしまうのだ。それに、気持ちいいからといって露出度の高い服装で走っていると、恐ろしい勢いで日焼けして悲惨なことになる。あとこれは季節に関係ないが、交通量の多い国道などを1時間も走ろうものなら、全身排ガスと埃で真っ黒けになってしまう。鼻をかんだり唾を吐いてみれば一目瞭然、暗黒物質たっぷりの恐ろしいものが確認できるだろう。
こんなことばかり書いていると、夏のバイク・ツーリングは良いことが一つもないやうに思えるが、もちろんそうではない。大気の流れや大自然との密接度はかなり高いので、他の移動手段では体感できない自然との一体感が味わえる。その他にも良さはいろいろあるのだけれど、こればかりは体感した人でないとわからないものが多いので、これ以上あーだこーだと書き連ねるのは止めておこう。それと、移動手段にバイクを選ぶか自動車を選ぶかということは、経済的な制約によるものも多少はあるだろうが、多くは「性分」というかライフスタイルというかアイデンティティーというか、何かそういう部分に関係しているのだと思ふ。また、同じバイクを選んだ人でも、チームを作って集団で走る指向の人と、あくまでもローンレンジャータイプの人と別れるみたいだ。今のところ僕は「単身単車型」だな。