老東巴の憂い

ユニクロ的東巴文字Tシャツ

昨夜のTV番組「世界遺産」は中国雲南省麗江だった。麗江ことリージャンには2度でかけているが、いずれも数年前の大地震以前の話だ。番組でもその状況が少し説明されていたが、中国政府の鉄筋による復興計画提案に対して、リージャンの人々は昔ながらの木造瓦葺き方式を推進したようだ。事実、見事に復元された美しい甍の波が、格調高くどこまでもうねり続き、玉龍雪山の裾野に連なっていた。
リージャンと切っても切れないのが、東巴だろう。トンパは教典であり文字であり、音楽であり伝説であり歴史であり言語であり宗教でもある。地球上最後の象形文字?それはホントだろうか。リージャンには「東巴文化研究所」があり、研究書も何冊も出版されている。しかし、いくら古老の聞き取りを記録しようとも、老東巴の呪術的舞踏を映像として録画しようとも、トンパが精神文明である限りその存続に寄与するものではない。
古俗を比較的よく残したこの僻地にも、今では昆明・大理から立派な道路が開通したという。納西(ナシ)族の風俗もすでに随分漢民族化しているものの、この先も漢化は進み続けるだろう。雲南に代表される少数民族居住地域では、今では観光分野にのみ、民族のアイデンティティー残滓を残すものも多い。とりあえずは漢民族の影響力を可能な限り排除し、古俗を保っていて欲しいな、などと思うのは所詮よそ者の勝手な希望なのだろうな。京都がいつまでもイメージに忠実な風景であって欲しいと思うのが、遠来の観光客の勝手な希望であるようなもの。
そういえば数年前から建設の始まったチベット・ラサを目指した鉄道建設、今頃どこまで出来たのだろう。「上海・ラサ特急」なんていうのは国際列車並みの魅力的な存在になるだろうけど、同時に漢民族の植入も劇的に増えるのだろうな。鉄道開通前に再訪問せねば・・・