メメント・モリ

生命の双魚

急性骨髄性白血病
大学生の頃、その恐ろしい病気で親友を亡くしている。何度も何度も彼のために成分献血にでかけたし、当時治療に良いと言われていたことは、彼のご両親ともどもあらゆることを積極的に行った。
今では片手に刺した1本のチューブで成分献血が出来るが、当時は両腕に繋ぐ一方通行式で、長時間を要した。血液から赤血球を分離する装置も巨大で、暗い病室に響く低いモーターの音はいまだに耳の奥に残っている。
放射線治療の副作用で全身の体毛が抜け落ちたり、インターフェロンや強い薬の副作用で異様にむくんだ顔・・・ 最後まで、見舞いに訪れる我々に明るく振る舞っていた彼だったが、考え得る全ての手は尽くされたのち、彼は死んでしまった。
骨髄バンクに登録したのも、彼の存在がきっかけだし、いまだに月に1回の献血を行っているのも、彼への思いによる部分が大きい。
病魔は非情なものだけれども、身近な死があってこそはじめて我々は命の尊さを学んでいくのだ。
死が日常から切り離されつつある現代では、その影響は家族の紐帯にまで波及し、社会全体をも希薄なものに変容させていってしまう。
メメント・モリ」=死を忘れるなという中世の警句は、現代にこそ必要なものなのかもしれない。
市川団十郎白血病が発症したらしい。病は常に無情で、人生は常に無常なものだ。