無限増殖

自己消滅式水玉変化

草間弥生心理的な強迫観念である水玉世界は、永遠に増殖を続けているようだ。
彼女を見かけたのは15年以上前、1度きりのこと。知り合いの陶芸家と同じコンペ会場に、突如として降臨された。
その頃は黄色い水玉カボチャをもの凄い勢いで増殖させていたようで、帽子もコートも何となくカボチャの形をしていたような記憶がある。
普段はしきりに悪態を突き、毒舌で誰彼かまわず「毒」を吐きかけて絡む体質だった陶芸家も、さすがに彼女の風貌と存在感には圧倒されたようで、目を丸くして黙り込んでしまったのが妙に可笑しかった。
結局芸術家同士の意志疎通は一瞬の刹那に行われ、会場を去る頃には陶芸家の手元には、黄色いカボチャのオブジェがいくつか握られていた。
芸術は狂気の一種であり、狂気は想像力の奥津城なのかもしれない。