壺中天雲上界


 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 
 

 
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中国では『雲圖』てう題名で公開らしい。ちなみに看板冒頭の《黒客帝國》三部曲とは『マトリックス』三部作のこと。ポスターとしてはてんこ盛りでかえってわかりやすいかも。
一個生命が六回轉生する話か・・・な?

 

 

 
監督兄弟
観たかった映画『クラウド アトラス』Cloud Atlas を、上映最終日に観ることが出来た。
不思議な映画だ。多くの人物が多時代、多次元、多世界でそれぞれの人生を生きつつも、或る者は前世の記憶として、また或る者は未来の記憶としていくつもの意識が時空を往還する。
其の様子は『めぐりあう時間たち』The Hours の世界観と重なる部分も有り、ともすれば映画 The Hours さへ此の Cloud Atlas の一部分ではないのかしらと怪しむほどの包括的且つ壮大な世界観を持った作品で、極めて濃厚なSFでもあるが、同時に痛々しいまでの人間劇でもある。
苦手なトム・ハンクスはさておき、イギリス人俳優を多く出演させていることもあって、並のメリケン映画とは一線を画す重厚で奇妙な雰囲気を湛えてゐる。ヒューゴ・ウィーヴィングもいくつもの役でさまざまな場面に出現するが、だうしても『マトリックスThe Matrix の黒服エージェントを連想させる。これは監督がウォシャウスキー姉弟であることとも関係してゐるのだらう。とまれ未来世界はここでもまた『ソイレント・グリーン』的社会構造として描かれてゐる。
一方こんな作品でヒュー・グラントが出てくると、お調子者で愛すべきダメ男ぶりが『ラブ・アクチュアリー』Love Actually を思ひ出させるし(確信犯的演出)、老人たちが一致団結して悪者に立ち向かふシーンはそこはかとなくモンティ・パイソンの The Meaning of Life へのオマージュにも思へる。イングランド人vsスコットランド人の対立を煽って暴動を起こし、其の隙に逃亡するてうシチュエーションもブラックユーモアが効いてて大変宜しい。The Matrix でもさうだったが、本当にウォシャウスキーの世界観は複雑で常に輻輳し、多重的で広大だ。
とりわけ2144年のネオ・ソウルの情景は、果てしなく『ブレードランナーBlade Runner における酸性雨降りしきる2019年のロサンゼルスの混沌とした風景に対するオマージュであるばかりか、部分的には最早後者を凌駕して時空の入り混じった独自の混沌空間を創出してゐる。それにしてもネオ・ソウルの闇を取り締まる機動隊の出で立ちが、黒装束の忍者そのまんまということに関しては、韓国人はとっても憤慨してゐるに違ひ無い。ソンミことペ・ドゥナが匿はれる部屋の内装が限りなく和風であることと共に、我々日本人にとってはお約束的ムフフなことだけどね。
とりわけ後半、予言と示唆に満ちた内容で、極めて幸せな164分で御座ゐました。
クラウド アトラス - Wikipedia