水没式


 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 
 
 
ぼんやりとTVを視てゐたら、大地震避難訓練のニュースをやってゐた。
大きなショッピングセンターの係員が声を張り上げて、買ひ物客を誘導してゐる。
「こちらの方(ほう)、避難通路の方(ほう)になりまーす」
続いてどこかで何か鉄道に関するイベントのニュース。
「ただいま記念入場券の方(ほう)を発売中です。御購入の方(ほう)は一人一組ということになっております。」
いったい此処に言ふ「方(ほう)」とは、どんな意味なのでせうか?
最初のヤツには我輩の嫌いな「なります」も入っておりますね。
気に入りません。
 
今日は低気圧一過の快晴で、天気晴朗なれど所謂冬型の気違ひ風がばうばうと吹き荒れておりましたものの、幸ひ未だ暖気が残り居りましたので身を切るやうな寒さは全く御座ゐません。
そんな風に揉まれ、午後はミニ自転車で工作現場を起点に周囲の歴史的風土の欠片と残照を求めて渉猟跋扈しておりましたが、途中100円ショップに辿り着きました。
工作現場で日に何本か線香を焚きます故、所謂100円ライターを購入せむと物色しておりますと、棚には1個で100円のものと2個で100円のものと3個で100円のものが御座ゐました。
デザインも大きさも少しずつ違ひますので手にとって裏返したり透かしたり、しげしげと眺めておりますと、丁度店員の小姐が近くに参りましたので、
「此の辺りで工作活動をいたす者にて候。此処にある100円ライター各種、1個で100円のものと2個で100円のものと3個で100円のものがあるが、これらの違ひを述べよ」などと事問へば、
「3個100円の方が安いんじゃないかと思ひますが・・・」などとニコニコ笑顔で宣ひたる。
「ああ、さうですか」などと適当に返事をしたは良いが、良く考へてみると實に奇妙な返答だ。
1個のものも2個入りのものも3個入りのものも皆此処では100円なのだからして、決して3個入りの方が安いわけではない。てうことは、小姐は1個あたりの単価について述べたのだらうか。それとも、機能的且つデザイン的な観点から述べた見解であらうか。はたまた、哲学的含蓄と暗喩と示唆に満ちた表現なのだらうか。
とにかく、煙に巻かれるとはこのやうなことを言ふのだらうが、よくわからん買ひ物であった。
さて、果たして偉人は何個入りの100円ライターを購入したでせう。
 
ところで何の話でしたか?
 

鹿児島地方のもろみ漬けを頂戴いたしました。
大根、胡瓜、人参、高菜、牛蒡、苦瓜などが入っておりました。例によって甘口醤油ともろみの甘さが相俟って、大変おいしう御座ゐました。