人智の水平線

未曾有、といっても、今生きてゐる人間にとってのことだ。
人間の時間単位にすれば数世代に一度くらいは、人間世界を藻屑と化すやうな天変地異は起き続けてきたのだ。
基本的に大自然は人間様の存在など興味がないのだから。それを、改変された地表のごく一部だけを見て、人間様は恰も大自然を制御下に治めたと、勝手に勘違ひしてゐるだけのことなのだ。
沖積平野の弥生遺跡に見られる地割れや噴砂の痕跡。時には、遺物を全く含まない不気味な純砂層。また、山間地の河岸段丘に築かれた縄文集落を覆ひ尽くす膨大な土砂の堆積。其処に暮らしてゐた人たちは、どうなって仕舞ったのだらう。今回の大地震や大津波の痕跡も、数百年後の考古学者たちによって検出されることだらう。
江戸時代のやうに、比較的多くの記録が残る大地震の例をみても、直後に大津波が来ることが既に忘れられてゐた地域もあるやうだ。事実、我輩の潜伏する太平洋に面した海浜集落も、江戸時代だけで少なくとも2回の大津波で跡形もなく消滅し、そのたびに数百メートル内陸に集落ごと再建されて現在に至ってゐる。
世代を超えて伝へられる知恵にはさまざまなものがあるが、我が邦の如き狭小な火山列島に暮らす者にしてみれば、遺伝子レベルで各種の危機感を感得してゐる人たちも確実に存在するのだらうが、残念乍ら彼らの声は社会全体に広がるほど大きくはない。
それとは別に、原子力だとか遺伝子組み換へだとか、科学的または物理的な理論は説明できても、何かしら心騒ぐ部分てうか違和感てうか、不気味なものを感じることは否めない。
それは、人間の触れてはならない「神の領域」を犯してゐるのではないかてう無意識の原罪に由来するものなのではないだらうか。
「神の領域」と言ふ意味では、飛行機てうものも不遜な乗り物ではあるが・・・
 
さて、ここ数日の政府や原子力安全・保安院*1東京電力の発表も、違和感を通り越して異常な領域に突入してゐる。
各地で検出された放射能の数値。一つ一つの数値そのものは健康に問題の無い程度であっても、それが常態化しつつあるわけだから、数字に弱い我輩が今更積算などしなくても、健康に大いに問題があることは言ふまでもないだらう。
いったい何度「問題なし」の日が続けば、「問題あり」になるのだらう。

 
東京、埼玉、千葉でも放射性物質を検出
「健康に問題なし」と文科相
2011.3.20 13:01
 
 文部科学省は20日、福島第1原発事故を受けて18日午前9時から24時間に降った都道府県の雨やちり、ほこりなどを検査した結果、栃木と群馬で放射性ヨウ素セシウム、東京、埼玉、千葉、山梨で放射性ヨウ素を検出したと発表した。

 文部科学省は、今回の検査のみで健康への影響は評価できないとした上で「検出されたいずれの地域も、別の検査では空間や水道水の放射性物質は健康に問題ないレベルと既に判明している」と説明した。

 1平方キロ当たりの検出量はヨウ素が栃木1300メガベクレル、群馬230メガベクレル、東京51メガベクレル、埼玉64メガベクレル、千葉21メガベクレル、山梨175メガベクレル。セシウムは栃木62メガベクレル、群馬84メガベクレル。その他のほとんどの地域は検出されなかった。震災対応などで報告が間に合わなかった地域もあった。

 農作物などへの影響については今後、厚生労働省を中心に評価するという。
 

 

 
4号機めぐり日米で食い違う見解
2011.3.19 22:47
 
 福島第1原子力発電所4号機の使用済み核燃料貯蔵プール(約1400立方メートル)をめぐり、日米で見解の違いが鮮明化している。日本側は19日、自衛隊による放水準備を進めたのに対し、米専門家らはプールに亀裂が入り冷却水が漏れ、「打つ手のない」(米物理学者)状況に追い込まれる可能性を指摘している。

 4号機では15日早朝に爆発音が確認された。5階にあるプール付近で爆発が起きたとみられ、建屋が大きく破損した。計測機器が電源喪失で使えないうえ、建屋内は放射線量が高く、東京電力はプールの水位や温度を確認できない状況となっている。このことが日米間の食い違いを生む要因となっている。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、米原子力規制委員会の複数の専門家の見解として、プールの壁に亀裂か穴が開いていると報じた。地震が起きた後の事態の推移のほか、事故発生時に同原発にいた米国人から得た情報をもとに判断したという。

 原子力企業幹部も同日、米紙ニューヨーク・タイムズにプールが壊れており、水の補充が極めて困難になっていると語った。

 4号機の危険性を最初に指摘したのは規制委のヤズコ委員長。16日の下院エネルギー委員会で「水はもう完全になくなり乾いている」と証言した。日本側は否定したが、同氏はすぐに「情報は信じるに値する」と反論した。
これに対し北沢俊美防衛相は19日の記者会見で「米側の見解は聞いている」としながらも、4号機の表面温度が100度以下であるとして、残っている水により冷却の効果があらわれているとの認識を示した。

 経済産業省原子力安全・保安院の担当者も19日、産経新聞に対し、プールの水位について「16日に目視した時点よりも下がっていると考えられるが、水がなくなっているという情報はない」と強調した。

 16日に陸上自衛隊のヘリが原発上空で計測した放射線量は250ミリシーベルトと高い数値だったが、専門家は「燃料棒が露出していればもっと高い数値になるはずだ」と指摘する。

 東電と保安院も4号機より、プールの水が蒸発して白煙が上がり続けていた3号機の方が緊急性が高いとして、3号機への放水を優先した。

 
確かに、我が邦は敗戦以来現在に至るまでメリケン国の属州なのかもしれないが、こと原子力に対する危機感に限れば、アイデンティティーの所属はさておき、属州としての規律を遵守すべきなのかもしれない。
 
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html←此のリンク先にあるPDF資料は、ダウンロードして一読しておく価値が有ります。
武田邦彦 (中部大学)←日々更新される武田氏の現状解説や意見も、傾聴しておく価値が十分あると思ひます。
以下のリンク先は余程気が向いたら覗いてみてもよいでせう。
首相官邸ホームページ
http://kinkyu.nisa.go.jp/
 
 

 
 
現場での捜索活動は既に遺体の発見へと其の目的が切り替えられてゐただらうが、たとへ確率計算上の時間が過ぎてゐても、人間が被災地を隈無く歩いて捜索しなければならないと言ふ理由が明らかになった。

 
80歳女性と16歳少年を217時間ぶり救出 宮城県石巻市
2011.3.20 17:06
 
 宮城県警によると、津波の被害が大きかった同県石巻市で20日午後、救助隊員によるがれきの下への呼び掛けに、2人が応じている声がした。2人は80歳の女性と16歳の少年で、衰弱しているが、ともに意識はあるという。

 2人は県警のヘリコプターで病院に移送された。大震災から217時間ぶりの救出劇だった。
 

 
そして、此のサイトで公開されてゐる画像も、見ておく必要がある。
Japan: Hopes fade for finding more survivors - Photos - The Big Picture - Boston.com

*1:あくまでも自分たちが安全てう意味の名称である。