難読恢恢

カボチャの逆襲はじまる

大学の時に古文書学なる講義を履修してゐてつくづく思ったのだが、現代人だと威張ってゐても、たかだか百年ちょっと前の文書が読めないことがしばしばあった。
講義で使用する教材は江戸時代末期の手紙だったり大福帳だったり、戦国時代の書状だったりしたのだが、とりわけ能筆てうワケでもない文書でも、現代人とは比べものにならない書き慣れた流麗な草書であることは確かで、一行のうち数字しか読めない部分もある。勿論、筆文字には筆でしか成り立たない独特な続け方があるのも確かだが、何とも忸怩たる思ひのしたりけるを思ひ起こしたりけり。
と言ふのも、或る方から焼き物の箱書きを読んでくれと写真が送られてきたのだが、其れが何とも著しい草書の極みで、歯が立たない。結局、本文5行(約50文字)中文字として解明できたのは十数文字であり、其のままでは全体の意味もはっきりと推し量ることが出来ない有り様であった。
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此の文章も含めて、日頃目にする活字の多くが横書きになって仕舞ひ、今では一般的な原稿用紙や一部の特殊な書類以外、縦書きを体験する機会も少なくなって仕舞ったことも確かなことだ。それに、例へ縦書きしてゐても、ボールペンなどでは筆のやうに湿った有機的なうねりや綴りは発生しないだらうから、身体技法としても古文書往時の人々が体現してゐた風には身についてゐないワケだ。
兎に角、今回の箱書きは、桐箱に収められてゐた焼き物の産地と年代がほぼわかったので、其のやうな考古学的考察方面から文章の半分以上を推測することが出来たものの、古文書学的には失格だ。
結局、此のママでは申し訳ないので、地元の古文書博士に紹介状を書いて送ったのだが、何とも情けないこと・・・
(-_-;)
                       
さて、今宵は工作所のおばさまがたを招待してのカレー会食。
三日前から仕込み始めたルーに昨天からはトリ肉(骨ごとぶち切らる)たっぷり投入し、ほろほろと肉が骨からかんたんに外れるほど、七輪で一昼夜煮込んだ力作。皆さん辛口は苦手と言ふことから、我輩の作るカレーにしては比較的穏やかなものに仕上がった。
おのおの手作りのお菓子や果物なども差し入れいただき、楽しく会食。
十六夜月が薄雲の彼方から優しく照り映ゑ、庭の植物もしっとりと夜露に濡れ、このやうにして静かに静かに、秋は暮れて行くので御座ゐました。
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