大江戸の夢

不快な形状です

さて、昨夜の積もる話しのまにまに、書の至宝を見やうかフェルメールを鑑賞しやうか、はたまたチャイナ・アヴァンギャルドの接してみやうかと贅沢な選択上の悩みを逡巡した結果、亀戸から都心への途上に位置する大江戸博物館訪問を決定。
大江戸線は開通したが、両国駅からはぐるっと回って歩かねばならんのですね、これが。そして当然乍ら、いつまで経ってもエスプリも感傷も時代の風格も生じてゐない此の建築物は、建築家の独りよがりの極みであるな、などとしみじみ思ふ。
恐らく世界最高級の巨大な雨宿り空間である地上部吹き抜けから見る国技館との並びは、どことなく巴里のラ・デファンスに有るグラン・アルシュからの眺望を連想させないでもないが、面白くないね。
前回此処に来たのは、絲綢之路展の時だから、まう3年ほど前のことだらうか。常設展は5年前に見てゐるのでそんなに見る必要は無いが、同時期開催の「発掘された日本列島2008」展は常設展階の一室で開催中のため、致し方なく常設展分の入場券も買ふ。それにしてもなんとかなりませんか、此の無駄空間。
(-_-)
                
ところで本題は、特別展「北京故宮書の名宝」展。
其の本命は言ふまでもなく、三度の北京訪問でもお目にかかれなかった「蘭亭序」(八柱第三本) なのだけど、唐代のものは行楷書張翰帖(欧陽詢)や行書湖州帖巻(顔真卿)までも来てゐる。更には、隣田寺好みの詩人蘇軾の「行書題王詵詩詞帖」や米芾の「行書復官帖」などの宋代のもの、朱元璋(洪武帝)の「行書総兵帖」や朱瞻基(宣徳帝)の「行書詩翰巻」(以上明代)、清の玄菀(康煕帝)による「行書柳条辺望月詩軸」や弘暦(乾隆帝)の名筆「行書瀛台小宴詩軸」までもが一堂に会してゐるではないか。
                                             

王羲之「蘭亭序」(八柱第三本) 原本:東晋時代
                              

黄庭堅「草書諸上座帖」 宋時代
                        

顔真卿「行書湖州帖」 唐時代
                                  

弘暦(帝) 清時代
                                              
蘭亭序 - Wikipedia
                                    
「蘭亭序」は八柱の第三本であれ別格なので敢へて言及せず(乾龍帝、改めてぢっくり見ると栗木博士のおっしゃる通り、お気に入り印のハンコ押し過ぎです!)、黄庭堅の闊達さは懐素には無い流麗さがあって、これまた好きな部類。
顔真卿の行書は堅さだけが際立って仕舞ってゐたが、弘暦こと乾隆帝の爽快さと風格・品格を兼ね備へた名筆であることをしみじみと思ひ知る。
         
堪能
              
(-_-)
                                            
一方列島展の方は一頃の勢ひは見られず、常設展の片隅で地味に開催中であった。
文物も14遺跡分しか出展されてゐなかったが、山形県金山町の太郎水野2遺跡から出土した一群のナイフ形石器はどれも見事で、思はず見入って仕舞ふ。
それと、九州で初めて発見された矢柄研磨器で有名になった宮崎県清武町の清武上猪ノ原遺跡の石器群もいとおもろ。