花冷ゑに思ふのこと

既に蓬は旬の春

低気圧が東海上に去り、冬型の気圧配置になった。
陽光はそのままに、風ばかりはばうばうと吹き荒れて、花をゆさぶり、家を靡かせる。気温は10度以上あるのだが、先日来の暖かさに既に慣れきってしまつた身には寒さしか感じられず、フリースを着込んでみる。夜までには、片付けるつもりで灰の手入れをしやうと玄関の土間に置いてあった火鉢を復帰させ、炭火に当たる始末。三寒四温の時は過ぎたのだけれど、花の頃は油断大敵。
(-_-)
               
大学生の頃、桜の頃に周遊券を用ひ九州旅行に出掛けたことがあった。
思ひ出そうとしても忘れられない熊本城。満開の桜の下で野宿せむと辿り着いてみれば、小雪舞ひ木枯らし吹いて恐ろしい寒さ。花冷ゑなどてう生やさしいものではなく、其の時は駅前で段ボールを調達し、路上生活者のおじさん(確か新潟出身の人だった)に教へてもらった地下街の出入り口で一晩過ごした記憶が蘇る。
其ノ後の日々も、日中こそ暖かけれども、夜の寒さはなかなかのもので、春夏用の寝袋ではなかなか野宿できず、主に九州島北半分を寒い思ひをして巡ったことが思ひ出された。
そんな中、松浦駅では小さな駅長室に入れて寝せて貰ふことが出来たし、長崎では始発のためにホームで待機中のディーゼル車の車内に、大分では別府温泉のアーケードの片隅の軒先に入れて貰ひ、ご飯もご馳走になりましたことも今は昔。
或る意味でまだ「良い時代」だったのかもしれません。<(_ _)>